抄録
主要有機エアロゾルの一つであるシュウ酸は、水溶性であるため雲凝結核として作用し、雲の形成を助長するとともに雲の寿命を伸ばし、間接的に地球を冷却すると考えられている。しかし、エアロゾル中のシュウ酸が単体のシュウ酸なのかシュウ酸錯体なのかは解明されていなかった。シュウ酸錯体の多くは不溶性であるため、雲凝結核としての働きには期待できない。XAFSを用いた本研究から、大気中のシュウ酸の多くはシュウ酸錯体として存在することが分かった。また、シュウ酸とシュウ酸錯体の水分吸着脱離重量測定の結果より、シュウ酸錯体は雲凝結核として働かないことが分かった。そのため、エアロゾル中のシュウ酸の雲凝結核としての働きはこれまでの見積もりよりも小さいことが予想される。