抄録
青銅器は銅(Cu)・スズ(Sn)・鉛(Pb)の合金によって作られ、鉄器が普及する以前にもっとも広く使用されていた金属器である。青銅器の考古化学的研究においては、製作年代決定や産地推定が重要となる。また、青銅器はリサイクルが行われていたと考えられており、リサイクル経験の有無は産地判別に影響を与え得る。Sn同位体分別によってリサイクルを検証するためには、原料となる錫石(cassiterite, SnO2)のSn同位体組成が地域によらず均一であるという前提が必要になる。そこでまず、Sn同位体データ蓄積のため、日本の錫石を中心にSn同位体分析を試みた。これまでに日本産の錫石7種について、化学分離せずにSn同位体の分析を行ったところ、有意な同位体組成変動は検出されなかった。現在Snの化学分離を行った試料の分析を進めており、今後試料中に含まれるマトリックスの影響を評価する。さらに、外国産の錫石の分析も行い、日本産のSn同位体組成と比較する予定である。