抄録
近年コンドライト全岩試料における様々な重元素安定同位体異常が報告されており,太陽系前駆物質が原始太陽系星雲内で同位体的に不均質分布していた可能性が指摘されている.しかしコンドライトは母天体上の二次的プロセスにより,必ずしも初期情報を保持しているとは限らない.本研究ではコンドライトから抽出された耐酸性残渣の精密Os同位体分析を行い,その同位体異常の程度から原始太陽系星雲内で生じたプロセスやその後の母天体プロセスの影響について考察した.炭素質および普通コンドライトではOs同位体比と隕石の岩石学タイプに強い相関が見られた.これは熱変成によりプレソーラーSiCが,水質変成によりr-過程のOsに富むキャリアが選択的に破壊されたためである.一方,エンスタタイトコンドライトの耐酸性残渣は同じ岩石学タイプでは炭素質・普通コンドライトより高いOs同位体比を持つ.これはEC母天体の還元的環境で熱変成が起きたことが原因である.