陸上高等植物の表皮や樹皮などの疎水的で硬い組織を構成する高分子量有機物は,抵抗性高分子と呼ばれる。抵抗性高分子は細胞壁や植物体に物理的強度を付与したり,微生物や昆虫の作用に対して植物体に抵抗性を与えるなどの働きをもつ。このような有機物は、植物体が堆積した後の微生物分解や続成作用に対しても抵抗性があり,古代堆積物中でもよく保存されている。演者らの研究グループでは,植物化石の抵抗性高分子の有機・生化学分析から,古植物の分類や植物生理,環境応答を復元する方法,さらに古植生あるいは生息した当時の古環境・古気候を復元する方法を開発・検討している。本講演では,これまでの研究成果をまとめて,現時点で考えられている植物化石や堆積物中の高等植物起源の抵抗性高分子の地球化学的特徴と地球科学的指標としての潜在性,さらに今後の研究の展望について紹介する。