抄録
1999年に起こった台湾チチ地震で動いたチェルンプ断層において、地下約1000mの断層破砕帯から得られた掘削試料(TCDP Hole-B)において、岩石-流体相互作用におけるストロンチウムの存在化学種について、放射光X線を利用したXAFS法により分析を行った。分析の結果、断層中央部のSrは斜長石のうちNaに富むアルバイトのXANESスペクトルと非常によく一致し、断層周辺部では、アルバイトのスペクトルと比較的よく似ていたが、一致はしなかった。このことは、岩石-流体反応によりSrが断層中央部に濃集するとき、アルバイトがホスト相となっていることを強く示唆している。岩石-流体反応でアルバイトが晶出する温度は250度程度以上とされ、Sr濃度上昇量から推測すると300度以上になったことが予想される。頁岩を母岩とするチェルンプ断層の元素濃度変化は、断層運動に伴い流体が断層を通過した時にできた変化で、その温度はアルバイトができるほど高温であったと理解することができる。