鉄は植物プランクトンにとって必要不可欠な元素であり、海水中の鉄の少なさから一次生産の制限因子となっている海域が存在する。このため、海洋における鉄の循環過程を解明していくことは重要である。これまで、外洋域の鉄の供給源については大気を経由した鉱物粒子の降下や大陸棚堆積物起源粒子の水平輸送が考えられてきた。しかし、最近では海底熱水からの供給についても注目が集まっている。そこで本研究では熱水中に多く含まれるFe( )を海底熱水が存在すると考えられる長崎県橘湾沿岸域でルミノール化学発光による船上分析法を用いて測定した。結果として、2010年10月の観測では熱水活動に起因すると思われる気泡が確認された沿岸域の測点で表層から海底に向けてFe(II)濃度の上昇が観測された。2011年5月の観測においても湾の中央付近の測点以外では表層から海底にかけてFe(II)濃度が上昇する傾向が観測された。