非晶質炭酸カルシウム(ACC)はCaCO3・nH2Oと表される準安定な物質である。n値(含水量)によって、加熱によるACC結晶化の際の結晶化温度が異なることが報告されている。本研究では、圧力によってACCが結晶化する可能性に着目し、ACCの加圧実験を行った。また、真空乾燥にACCの含水量を制御できる可能性についても併せて検討した。
ACCは、氷浴した0.1 M CaCl2水溶液と0.1 M Na2CO3水溶液を用いて合成した。乾燥には到達圧力の異なる2種類の真空ポンプを用いた。TG-DTAにより、これらの含水量はそれぞれn=1.49およびn=0.60であり、有意に異なることが分かった。それぞれのACCを0.08-0.8 GPaの範囲で加圧し、XRDおよびIRで測定したところ、ACCの圧力誘起結晶化が初めて観測された。この結晶はカルサイトおよびファーテライトであり、圧力によって多形比が変化することが分かった。また、含水量によりACCの結晶化圧力および多形比が異なることも分かった。