抄録
ホウ素(B)の安定同位体比である11B/10B同位体比は地球化学的トレーサーとして注目されている。筆者らは昨年の本学会において多重検出器を装備したICP質量分析計(MC-ICP-MS)を用いてB同位体比を精度良く測定する方法について報告した(永石・谷水, 2010)が、今回一部改良(導入系の溶媒および洗浄溶液の見直しによる洗浄時間の大幅な短縮、およびLi外部補正による精密分析化)を加え、より簡便かつ高精度に測定する方法を開発した。海水標準試料(IRMM BCR-403)のBを分離して測定した結果δ11B値+39.51± 0.11‰(2SD)が得られ、この値はP-TIMS法の値とも誤差の範囲内で一致する。今後、標準試料の測定数を増やして、さらなる精度・確度の検討を行う予定であり、学会ではその結果を交えて報告する。