日本地球化学会年会要旨集
2011年度日本地球化学会第58回年会講演要旨集
セッションID: 1C18
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セッション21 災害による環境汚染および復興の地球化学
福島第一原子力発電所事故による人工放射性物質の拡散と環境中の線量評価
*田副 博文細田 正洋反町 篤行中田 章史吉田 光明床次 眞司山田 正俊
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抄録

東日本大震災に伴う津波によって発生した福島第一原子力発電所事故は多くの人工放射性核種を環境中へと放出した。原子力発電所周辺に設置されたモニタリングポストの計測値も3月14日から16日にかけて非常に高い空間線量率が示しており、1号機および3号機の水素爆発による拡散が主要な放出源となっていると考えられる。放出された放射性物質は川俣町、浪江町、飯舘村のある北西方向へと輸送され地表へと沈降し、不均一に分布している。弘前大学では3月16日より住民の被ばく状況調査と環境試料の採取を行った。NaIシンチレーションサーベイメータを搭載した車両を用いて青森県から福島県にかけての走行サーベイを行うとともに南相馬市、飯舘村、浪江町を含めた福島県内の土壌・植物・水試料の採取を行った。南相馬市から採取された植物試料からは131Iや134Cs、137Csが非常に高い濃度で検出されている。また、特に高線量の地域で採取された試料からはNp-239、Ce-144、Ce-141、Ra-226、129Te、Ru-103、Nd-147、Ba-140、Sr-91、137Cs、129Tem、Zr-95、Zr-97、95Nb、Tl-206、Mn-54、Ag-110m、Y-91、La-140、Sb-124など様々な核種が検出されている。131Iを含めた短寿命の核種の多くはすでに減衰しているが、Cs-131や137Csのような比較的寿命の長い核種に関しては今後もモニタリングと動植物への取り込みに関する情報を常に監視する必要がある。Sr-90やPuのような内部被ばくにかかわる核種に関してのデータの取得は限定的であることから速やかに化学分析を行うことが求められる。弘前大学では福島市内に活動拠点を設け、今後も長期的なモニタリングを継続していくことを予定している。

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