抄録
アミノ酸窒素同位体比による生態系解析手法では、生物による窒素代謝におけるフェニルアラニンとグルタミン酸の窒素安定同位体比の挙動の差から各生物の栄養段階を推定する。本研究ではシベリアに位置する巨大な古代湖であり、数多くの固有種が存在するバイカル湖沖帯生態系生物について、アミノ酸窒素安定同位体比による食物網解析手法を応用し、アミノ酸窒素安定同位体比分布と生態系構造についての解析した。各沖帯生物の栄養段階は、一次生産者の珪藻が1.0、動物プランクトンのコペポーダが2.0、端脚類が2.2を示し、これらを捕食するコレゴヌス科の魚は3.3~3.8を示した。魚食魚の浮遊性カジカ類は4.2~4.4であった。バイカルアザラシは5.0となり最高次の捕食者であることが示された。個々のアミノ酸窒素安定同位体比分布からは、湖内の環境変動が大きいことも推察され、本手法の環境動態変動に対する解析ツールとしての有用性が示唆された。