抄録
最終氷期最寒期(LGM)の大気中二酸化炭素濃度は180-190 ppmしかなかったのが、その後の融氷期に急激に上昇したことが知られている。大気中二酸化炭素濃度を変化させる重要な役割を果たしているのが、生物ポンプである。本研究ではチリ沖中・高緯度域にて採取された海底堆積物を用いて、生物起源粒子フラックスを復元し、生物ポンプ能力の変化を明らかにすることを目的とした。全有機炭素フラックスの結果、チリ沖中緯度ではLGMから1.5万年前の生物ポンプは活発に働いていなかったことが示唆され、この時代に大気中二酸化炭素濃度が上昇する要因として同海域の生物生産は寄与していなかったと言える。融氷期の大気中二酸化炭素濃度の上昇とは矛盾しない結果である。1.5万年前以降のフラックスは増加傾向にあり、マゼラン海域でも完新世の6千年前以降増加していることから、チリ沖の生物ポンプが活発に働くのは完新世以降であったことが分かった。