抄録
山梨県・富士北麓地域の山中湖は、従来約2000年前の富士山火山活動によって河川がせき止められ成立したものと考えられてきた。一方、近年の山梨県の調査により、その成立が約6000年前に遡ることが明らかにされたが、その成因については未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、山中湖で掘削されたボーリング試料中の植物バイオマーカー組成の変動を調べ、過去1万2000年間の湖水位変動とその要因を検討した。その結果、堆積物中の沈水植物の寄与度を示すPaq値の変動から、約6000年前に水生植物が増加していたことが明らかとなった。一方、同堆積物中の長鎖脂肪酸の平均鎖長の変動は、山中湖流域で水生植物が増加する約6000年前に、流域の有効降水量が増加していたことを示しており、山中湖の成立が、富士山火山活動のみならず流域の湿潤化の影響を受けていたことが示唆された。