抄録
LA-ICPMS法は固体試料の元素組成・同位体組成分析が可能であり、分析感度、繰り返し再現性、迅速性の高さから様々な地球化学試料の化学分析に利用されている。固体試料の直接分析においては検出器のダイナミックレンジが十分に広いことが重要である。アッテネータ装置は検出器に入るイオンビームを約500分の1に抑制し見かけ上のダイナミックレンジを拡張する装置である。本研究では、LA-ICPMS法を用いてアッテネータのゲインの質量数依存性や長時間安定性を評価した。その結果、ゲインの質量依存性については測定同位体毎に適正な抑制率を決定することで補正できることがわかり、信号強度の大小や時間経過に対する抑制率の依存性も小さいことが確かめられた。また天然のジルコン標準試料をアッテネータ装置のon/offを切り替えて繰り返し測定することで、測定の精度・確度を大きく落とすことなく検出器(マルチプライア)のダイナミックレンジを9桁程度まで拡張することが可能だと示された。