抄録
さまざまな元素の安定同位体組成の変動は、物質の起源や生成プロセスを制約するトレーサーとして、また、同位体分別作用を生じさせた化学反応や温度などの反応条件のレコーダーとして一般に利用される、有力な地球化学的ツールである。金属元素に対する安定同位体分析にはMC-ICPMSが主に利用されるが、分析精度は必ずしも十分とはいえない。本研究では、表面電離型質量分析法 (TIMS)による同位体比測定とダブルスパイク(DS)法による質量分別補正を組み合わせたDS-TIMS法によって、より精度の高いSr安定同位体分析法を開発した。本研究のDS-TIMS法によって得られた標準試料の繰り返し分析結果はδ88Sr = ± 0.02 (2SD, n=10) であり、MC-ICPMSを上回る分析精度が実現された。また、火成岩を中心に様々な岩石試料のSr安定同位体が0.5‰変動している事を明らかにした。