抄録
サンゴ骨格のδ18OとSr/Ca比は表面海水温(SST)復元に用いられる代替指標であるが、それらは骨格成長速度の影響を受け、環境変化を正しく記録しないという問題が指摘されている。McConnaughey (1989)は、δ18Oはサンゴの骨格成長速度が速いほど軽くなることを示した。一方でSr/Ca比には成長速度依存性がないことが、近年のサンゴの飼育実験の結果から明らかになってきた(Inoue et al., 2007; Hayashi et al., 2013)。本研究では熊本県天草市牛深町から採取されたハマサンゴのδ18OおよびSr/Ca 比の骨格成長速度依存性の評価を行った。本研究の結果、Sr/Ca比は成長速度に依存しないことが明らかになり、Sr/Ca比は非常に優れたSSTの代替指標であることが示唆された。これにより、温帯域サンゴを使用した温暖化の長期復元が可能になると考えられる。