抄録
石英は地殻を構成する主要な鉱物であり、SiO2という単純な組成ではあるが、結晶成長時の温度や圧力の違いにより、様々な結晶構造の変異(欠陥や転移)や不純物元素(Ti4+, Ge4+, Al3+, Fe3+など)の混入を生じる。また生成後に受けた温度や圧力によっても欠陥の解消や新たな生成また不純物の移動などを生じ、石英の結晶構造には、生成時だけでなく、生成後の環境に関する情報も記録される。筆者らは、石英の結晶構造の変異や元素の混入が多岐に渡ることに注目し、様々な手段で構造欠陥と微量元素の検出を試み、石英の供給源推定に役立てたいと考えている。本研究では、石英の欠陥ならびに不純物中心の特徴を古気候研究へ応用すること、具体的には堆積物中の風成塵(ダスト)の起源地推定を念頭に、中国のタクラマカン砂漠とゴビ砂漠表層から採取された石英の個別粒子について、カソードルミネッセンス分析を行い、各砂漠由来の石英の違いを抽出することを目指した。