抄録
生命がいつ地球上に誕生したのかは科学史上の大きな問題である。西グリーンランド・イスア表成岩帯には約38億年前の岩石が分布しており、岩石中からグラファイトが発見されている。この地域の堆積岩中のグラファイトは13Cに欠乏した同位体組成を示すことから(~ -19‰)、最古の生命の痕跡と考えられている。しかしながら、同地域には、変成流体から無機プロセスで沈殿したグラファイトも見つかっており、変質した岩石から生物由来グラファイトと無機由来グラファイトを見分けるのは非常に困難である。本研究では、イスア表成岩帯北西部で新たに発見した黒色片岩中のグラファイトと、同地域の地殻内流体から沈殿した無機由来グラファイトについて地質学的、地球化学的、鉱物学的特徴の対比を行い、生物由来グラファイトと無機由来グラファイトが異なる特徴を持つことを初めて明らかにした。