抄録
約22億年前に最初の全球凍結が起こったという仮説が提唱されている(Kirschvink et al.,1992;Hoffman et al.,1998)。全球凍結終了後にはシアノバクテリアなどの光合成生物の活動が盛んになり、大気中の酸素濃度が急増したと言われているが、当時の生物活動を示す直接的な証拠はほとんど見出されていない。この問題に取り組むため、本研究では、南アフリカ古原生代の氷河堆積物(ダイアミクタイト)中のケロジェン及び炭酸塩の炭素同位体比分析を行った。測定の結果、炭素同位体比はケロジェンでδ13C=-37.26~-34.51‰、炭酸塩でδ13C=-6.57~-3.35‰であった。本研究で得られたケロジェンの炭素同位体比は光合成生物と嫌気性生物の両方からの寄与を反映すると考えられる。またこの値は深度を通じて一定の値を示したことから、この期間の生物進化に大きな変動はなかったと推測される。