主催: 日本地球化学会年会要旨集
海底熱水域で得られた試料の年代測定を行うことは、その時間変動に伴う熱水活動の変遷史を調べるためだけでなく、そこに発生した熱水生物圏の消長、また鉱床の成因を明らかにするためにも重要である。そのために海底熱水性重晶石を用いたESR(電子スピン共鳴)法の予察的な年代測定を行った。
分析手法は、採取した試料を砕いた後、化学処理によって硫化物を溶解させて除去し、重液によって比重4.5をもつ重晶石を分離した。次に、γ線照射を行い、室温にてESR測定を行った。得られたESRスペクトルより求めたESR信号強度とγ線照射によるESR信号強度の増大から総被曝線量を求めた。この総被曝線量と年間線量率によりESR年代を算出した。
各熱水域で採取された試料の年代を比較すると、与論海丘<鳩間海丘≒伊平屋北海丘<伊是名海盆となった。これは、航海において観察された熱水域生態系の発達と調和的であった。