抄録
鹿児島湾奥部海底には姶良カルデラと呼ばれる火山性陥没地形が存在する。その東部海底には現在活動中の火口の一つと考えられている若尊火口が存在し、活発な噴気活動が認められている。噴気ガスの主成分は二酸化炭素及びメタンである。火山ガスモニタリングは火山活動の状態を把握する有用な方法の一つである。本研究では過去6年間のCO2フラックス及びメタンフラックスの推定、またメタン酸化細菌によるフラックスへの影響を調査することを目的とし、溶存二酸化炭素の濃度と炭素同位体比及びメタン濃度を測定した。見積ったCO2フラックスは年ごとに変動はあるものの、大きな変化は見られなかった。全炭酸のδ13C値は海底から直上60mで7‰低下しており、メタン濃度の著しい低下も見られた。このことから、若尊火口内で活発なメタン酸化が起きており、メタン酸化細菌によってmMオーダーのメタンが消費されている可能性が考えられる。