抄録
地球温暖化に影響を与える要因にエアロゾルによる冷却効果が挙げられる。エアロゾル中のシュウ酸は間接的冷却効果をもつとされているが、吸湿性を示さない金属錯体を形成することによる冷却効果の低下が示唆されている。そのため、錯体生成の効果を精密に解析し、シュウ酸の吸湿性及び冷却効果を評価することは地球温暖化を正確に予測する上で重要である。そこで本研究では、シュウ酸の吸湿性および安定性について評価した。その結果、1.7 µm以下の粒径において全シュウ酸に対して30-60%のシュウ酸が不溶性の金属錯体を形成していることが明らかとなった。そのため、シュウ酸による間接的冷却効果はこれまでの推定よりも小さいと考えられる。また、シュウ酸は金属錯体を形成することにより、光分解性が低下することが分かった。そのため、大気中のシュウ酸は金属錯体を形成することにより、他の水溶性有機物と比較してエアロゾル中に高濃度存在していると考えられる。