抄録
太平洋のオーストラル諸島と大西洋のセントヘレナ島にはHIMU玄武岩が産出するが、この両者の同位体組成を比較し、両大洋下のHIMU端成分の成因を議論する。両者は206Pb/204Pb, 208Pb/204Pb, Sr, Nd, Hf同位体に関して非常に似た組成を示し、同じ成因であることを示唆するが、唯一207Pb/204Pbが異なる。これは太平洋下と大西洋下のHIMUの形成年代が異なることを意味し、前者のほうが後者より0.3Gaほど若いという結果を得た。また、208Pb-204Pbシステマティクスから端成分のTh/Uを見積もるとその値は新鮮な海洋地殻の値に近く、HIMUの成因が変質した海洋地殻がリサイクルしたとする一般的なモデルと一見矛盾する。このことは過去の海洋地殻の変質が低酸素状態で起こり、Th/Uの分別が現在のような酸化状態では起きていなかったことを示唆する。