抄録
古気候・古環境復元は、将来の気候変動とそれに伴う環境変化を予測する上で、重要な研究課題である。私は、炭酸塩堆積物に記録される元素の起源や同位体の分別過程に興味を持ち、熱力学モデルを利用して、物質循環の変遷を定量的に議論することを目標としてきた。
河川で発達する炭酸カルシウムの堆積物(トゥファ)を用いた研究では、土壌大気・外気・石灰岩の3つを端成分とした炭素のミキシングモデルを考え、炭素の供給源を特定するとともに、堆積場の炭素安定同位体比が生物生産量の季節変化を反映していることを明らかにした。石筍を用いた研究では、ストロンチウムと希土類元素に着目し、これらの長期変動パターンが、地下水中での方解石の沈殿や石灰岩の溶出過程における元素分配に支配されていることを明らかにした。希土類元素パターンは、溶出時の速度論的効果を反映するため、石灰岩の化学風化速度の指標となる可能性がある。