抄録
本講演では,星間塵表面反応で生成する水分子の水素同位体組成について,これまでの実験結果をもとに詳細な議論をおこなう。一般的に星間分子は分子生成時および分子生成後に重水素濃集可能であるが,水分子に関しては,極低温の星間塵表面では分子生成時に限定される。水分子は3つの経路でおもに生成するが,うち2つの生成反応は極低温では熱的におこりえず,量子力学的なトンネル効果が不可欠である。量子力学的トンネル反応には大きな同位体効果が期待されるため,生成する水分子の水素同位体組成を議論する際には注意が必要である。