抄録
Agoultユークライト中のジルコンについて,微量元素定量と高精度ウランー鉛年代測定を実施し,ベスタ地殻の初期進化に制約を与えた.ジルコンのチタン濃度から,ジルコンの結晶化温度は900度であること,年代測定によりジルコンの結晶化年代は45.55億年前であることが分かった.この結果は,ベスタ地殻が火成結晶化した後に部分融解を伴う高温熱変成イベントを45.55億年前に経験したことを示す.さらに,ジルコンの希土類元素パターンから,ジルコン結晶時の酸素フガシティは鉄-ウスタイトバッファにおける酸素フガシティよりも低いことが分かった.この見積もりは,先行研究による,ユークライトの火成結晶化時の酸素フガシティの見積もりと調和的であり,ユークライトが高温の変成作用時においても還元的環境を保持していたことを示す.これは,普通コンドライトなどが熱変成時に酸化されたことと対象的であり,その当時ベスタ地殻に水などの酸化剤が枯渇していたことを示唆する.