抄録
炭素質コンドライトからは、これまでに様々な有機物が発見されている。有機物の存在度や同位体比は、その形成環境や反応経路の情報を持つ。我々の過去の研究では、隕石中からアルキルピリジンを始めとする含窒素環状化合物の一連の同族体が検出された。本研究では、それらの物質の形成環境推定のため、隕石母天体の水質環境を想定した予備的な合成実験を行った。アルデヒドとアンモニアを出発物質として水溶液中での合成反応を行った結果、隕石で見られた有機物の一部が検出された。しかし、隕石サンプルとの相違点も多く、その原因として、水溶液中でのアルドール縮合が不十分であることが挙げられる。しかしながら、本研究結果は、不溶性有機物の生成プロセスとして提案されている隕石母天体過程でのアルドール縮合が、可溶性有機物へも貢献している可能性を示唆し、隕石有機物形成におけるアンモニアの重要性も示めしている。