抄録
成層圏オゾン破壊物質である塩化メチルの最大の発生源は熱帯林であるが、その放出量を支配する要因や発生源が熱帯域に偏っている理由については、不明である。最近、亜熱帯~冷温帯に自生するゼンマイの葉が大量の塩化メチルを放出していることが明らかになり、単一種からの塩化メチル放出量を異なる気候条件下で比較することが可能になった。本研究では、つくば、苫小牧、屋久島においてゼンマイからの塩化メチル放出量を調べた。その結果、つくばでは有意な季節変化は認められない一方、苫小牧では6月の放出量は8月の1/10以下であること、屋久島では採取地点によるバラツキが極めて大きいこと等が分かった。また、塩化メチル放出量と葉内の塩化物イオン濃度との間に正の相関(R=0.70)が見られた。