抄録
海水中の硫化物の存在状態とその生物地球化学的な役割を明らかにすることを目的に、遊離の硫化物および酸添加により金属硫化物をH2Sに変換して濃度を測定する分析手法の確立、また実際の酸化的な海水中における硫化物の存在形態別濃度測定を行った。Capillary GC-FPD法による微量硫化水素濃度の検出限界は0.1 pmol/kg以下、繰り返し測定の標準偏差はピコモルレベルの測定で5%以内であり、酸素を十分に含む酸化的な海洋環境における硫化物濃度の測定に適用可能であることを確認した。確立した分析システムを用いて、2014年6月に行われた新青丸KS-14-10次研究航海において、九州鹿児島市の南方約90kmに位置し、薩摩硫黄島および竹島を含む東西約22km、南北19kmの国内でも有数の大きさをもつ鬼界カルデラにおける海水中の遊離および金属硫化物濃度の鉛直分布観測を行った結果について報告する。