抄録
約6600万年前(白亜紀末)の生物大量絶滅は、巨大隕石の衝突により引き起こされたと考えられている。しかし、天体衝突が引き起こした環境変動と大量絶滅の具体的なメカニズムは全く決着がついておらず、様々な仮説が乱立している。重要な鍵となるのは、海洋での絶滅記録、特に海洋プランクトンの絶滅の理解であるが、これまでに提案されている絶滅機構の仮説では、地質記録に残る海洋生物の絶滅を説明することは非常に困難であった。本研究では、大阪大学の高出力レーザーを用い、世界初となる宇宙速度での衝突蒸発・ガス分析実験に成功した。実験結果から、先行研究で想定されていた二酸化硫黄ではなく、短期間で硫酸になる三酸化硫黄が隕石衝突で放出されることがわかった。さらに理論計算を行ったところ、衝突で放出された三酸化硫黄は数日以内に酸性雨となって全地球的に降ることと、その結果起こる深刻な海洋酸性化が明らかになった。