抄録
福島原発事故の際、大量の放射性ヨウ素(主としてI-131)が放出された。放射性ヨウ素は甲状腺に濃縮されるため、原発事故に起因する被ばく評価を行うことが大変重要である。しかし、I-131は半減期が8日と短いため、放射性ヨウ素の沈着量や分布に関するデータが少ない。そこで我々は、不足しているデータを補う目的で、I-131と同時に放出されたI-129(半減期1570万年)を指標にして、放射性ヨウ素の沈着量を復元することを試みた。試料としては文科省が集めた土壌や我々が独自に集めた試料を用いた。I-129は微量であるため、化学分離した後、加速器質量分析法 (AMS)で測定した。約700箇所から採取された土壌についてI-129濃度を得た。今までI-131データが殆どなかった福島原発から20km圏内や南西側の地域を中心に、I-131沈着量を推定した。