抄録
他海域に比べ、地球温暖化に伴う海水温の上昇率が高い日本海は温暖化の影響をいち早く反映すると予測される。日本海の縮図として、富山湾は今後の温暖化の影響をモニタリングする地域に適しているといえる。富山湾において温暖化による生態系への影響を明らかにするためにはまず、富山湾の食物網の特徴を把握する必要がある。本研究では富山湾の代表種シラエビPasiphaea japonicaの炭素・窒素安定同位体比解析を行い、その食物網の特徴把握と環境指標種としての有効性を検討した。シラエビPasiphaea japonicaの炭素・窒素安定同位体比は1年を通して大きな変化がないことから、一定の餌環境であると推測された。また、頭胸甲長と窒素安定同位体比の間に正の相関が見られた。食物網解析の結果から、シラエビPasiphaea japonicaは植物プランクトンを起点とした二次消費者であり、陸域の影響は受けていないことが示唆された。個体間の値のばらつきが小さいことから、環境指標種としての有効性が示された。