抄録
本研究では、高い時間分解能をもつ網走湖堆積物コアを用いて、有機化合物組成の変動から過去約300年間の環境変化の解析を行うことを目的とした。主に植物プランクトンに由来する中鎖脂肪酸およびフィトールは、深さ56cmから現在に向かって濃度上昇が見られた。これは1950年代以降の牧畜をはじめてとした人間活動の増大に伴い植物プランクトンの生産が大きくなったことを示唆している。一方、陸上植物に由来するリグニンフェノールおよびクチン酸は、過去約300年前から現在にかけて緩やかな減少傾向が見られた。これも人間活動による森林伐採などを反映している可能性が考えられた。