抄録
樹木年輪は、機器観測が始まる前の気候変動を復元できる重要なプロキシである。近年、年輪セルロースの酸素安定同位体値(δ18O)が、過去の降水量や相対湿度を推定する指標として注目を集めている。しかし沖縄では、年輪の明瞭な樹木が少ないことに加え、戦災や台風による影響で長い時間スケールをカバーできる試料が少なく、このような研究は行われていない。沖縄の歴史書には、1830年代に度々台風や干ばつの被害があったことが記録されている。樹木年輪から当時の気候を復元することができれば、定量的なデータと歴史書に記された人間社会との関係性について考察できることが期待される。本研究では、沖縄本島で1980年に伐採されたリュウキュウマツのセルロースδ18Oの変動を用いて、過去の気候を復元を行った。今後は、別個体からのデータも合わせて、歴史書に記録された干ばつ・飢饉との関係性も検討する予定である。