抄録
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故により,放射性セシウムを含む大量の放射性核種が放出された。水・物質循環において河口―沿岸域は陸域と海洋の接合部であり,物理的拡散,溶存物質の不溶化,沈降や再溶出等が展開される場所であるが,同域における福島第一原子力発電所事故由来の放射性核種に関する研究は少数である。本研究では塩分勾配及び塩分変動が報告されている松川浦を河口―沿岸域のモデル域として,汽水域に存在する放射性核種の分布状況を把握し,河川-汽水域-海洋の系における放射性核種の輸送実態を明らかにすることを目的とした。