抄録
2011年3月、東北地方太平洋沖地震に起因する津波により福島第一原子力発電所で水素爆発が起こり、放射性物質による土壌汚染が深刻な問題となっている。半減期・総放出量の関係から、この放射能汚染の主な原因はセシウム(Cs)であることが報告されている。これまでに我々は、スメクタイト標準試料にもともと保持される微量セシウムを対象に、様々な陽イオンを用いたCs脱離実験を行ってきた。その結果、2価の陽イオンが添加された場合、粒子の凝集が促されCsの脱離は阻害される一方、Naが添加された場合は粒子の分散が維持されCsは可逆的に脱離することを見出した(Fukushi et al. submitted)。天然水はさまざまな陽イオンのミクスチャーである。したがって、個々の陽イオンから得られた結果を複数の陽イオン混合系への適用できるかどうかは検証される必要がある。本研究では、Na-Mg混合溶液によるスメクタイトからのセシウム溶出挙動を検討した。