抄録
生物源炭酸塩の炭素酸素安定同位体組成(δ13C, δ18O)は地球環境変動を記録することから,過去60年以上にわたり古環境解析に多用されてきた.一方,堆積物や岩石中で無機沈殿によって形成される炭酸塩も,形成時の温度履歴や周辺水の起源に関わる情報をその同位体値に記録しているので,環境情報を紐解く鍵として活用することが可能である.これらの炭酸塩同位体研究の発展に伴い,近年では微小領域における高解像度解析が重視されつつあるが,分析技術の制限がさらなる展開の壁となってきた.本研究では,この問題を解決するために開発した微量炭酸塩安定同位体比測定法の紹介と近年の応用研究,そして分析に際しての課題と今後の展望について紹介する.