抄録
本研究の目的は,黒鉱鉱床の周辺部に産する鉄やマンガンに富む化学堆積岩を採集し,鉄安定同位体比を用いて,当時の北鹿海盆における酸化還元環境や海底熱水活動と大規模黒鉱鉱床の形成要因との関係性を明らかにすることである.分析の結果,黒鉱鉱床形成期および200-300万年後までの試料のδ56Fe値は,-1.75‰から+2.02‰と大きく分別していた。このことから,当時北鹿海盆の一部が局所的に非酸化的になっていたと考えられる。また,黒鉱鉱床を伴う試料が-0.80から+2.02‰と56Feに富んでおり,比較的分別の程度が小さい一方で,黒鉱鉱床を伴わない試料は-1.75から+0.69‰と56Feに乏しく,より大きな分別を示した。これは黒鉱鉱床形成時には活発な熱水活動により熱水からの溶存鉄のインフラックスが大きかったこと,また,黄鉄鉱の沈殿により溶存鉄が56Feに富むようになったことが原因と考えられる。