日本地球化学会年会要旨集
2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
  • 浦辺 徹郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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     海底鉱物資源開発の大きなうねりが世界規模で拡がっており、それに伴う海洋環境評価もまた新たな学問分野として急速に展開している。日本でも、これまでのJOGMECの海底熱水鉱床開発計画に加えて、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)として、次世代海洋資源調査技術(海のジパング計画)が省庁連携で開始された。後者にはJAMSTECを始めとする国立研究開発法人のほか、公募を通じて多くの大学、民間企業が研究・技術開発に参画しつつある。計画は、海洋資源の成因に関する科学的研究、海洋資源調査技術の開発、および、生態系の実態調査と長期監視技術の開発、の3本柱よりなる。計画では出口戦略として海洋産業の創出を追求している。基礎研究であっても、その解析・分析ノウハウや、自ら開発した測定機器などを民間企業へ技術移転することが既に進んでいる。このような動きの中で、地球化学者が果たすべき役割について考える。
  • 熊谷 英憲, 及川 光弘, 南 宏樹, 中村 謙太郎, 川口 慎介, 北田 数也, 宮崎 淳一, 高井 研
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海底熱水活動はその発見以来、広く科学研究の関心を集めてきただけでなく、近年は、熱水噴出孔周辺の硫化鉱物が金属資源として注目されるようになってきた。現在、少なくとも3タイプの調査研究が行われている:1)鉱物資源調査、2)大陸棚調査、3)学術研究調査。本講演では、これら3種の調査・研究を中心に、沖縄トラフにおける海底熱水研究の現状を概観する。
  • 中村 謙太郎, 川口 慎介, 北田 数也, 熊谷 英憲, 高井 研, 沖野 郷子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    近年,海底熱水噴出孔の周辺に溜まった硫化鉱物が,Cu, Pb, Znなどのベースメタルや,In, Ga, Geなどのレアメタル,さらにはAu, Agなどの貴金属の資源としても注目されるようになっている (Schrope, 2007).このような地球化学的,生物学的,さらには鉱床学的な興味から,海底熱水噴出孔の研究はますますその重要性を増している.一方で,水深1km以上の深海底に存在する熱水噴出孔という名の小さなスポットを探し出すことは,現在の最先端技術をもってしても容易ではなく,海底熱水系の研究を進展されるためにより効率的な熱水探査手法が常に求められている (Nakamura et al., 2013).本研究では,近年その利用が拡大しているマルチビーム音響測深機によるウォーターカラムの観測 (Colbo et al., 2014) を用いて,中部沖縄トラフにおいて海底熱水噴出孔のマッピングを行った.
  • 土岐 知弘, 平敷 紗和子, 新城 竜一, 石橋 純一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    沖縄トラフ海底熱熱水中のLi同位体比を測定して,比較検討した結果,世界の熱水と比べて,濃度が高く,同位体比が低いことが明らかとなった。このことは,沖縄トラフの海底熱水が,堆積物および火山岩と反応していることを示している。
  • 野崎 達生, 石橋 純一郎, 島田 和彦, 長瀬 敏郎, 髙谷 雄太郎, 加藤 泰浩, 川口 慎介, 和辻 智郎, 澁谷 岳造, 山田 亮一 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    2010年9~10月に伊平屋北海丘で行われたIODP Exp. 331において,複数の人工熱水孔が形成された.その後,掘削孔の経過観察を目的とした潜航調査が複数回実施され,Hole C0016Aでは25ヶ月で高さ15 mにチムニーが急成長しており,熱水・生物・チムニーが採取されている.本研究では,これらのチムニーの記載・化学分析を行い,その生成機構や地球化学的特徴を明らかにする.また,JAMSTECで遂行中である人工熱水孔を利用した黒鉱養殖プロジェクトについても紹介する.
  • 山田 亮一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 1A06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    黒鉱鉱床の多様性を紹介し,その代表的鉱床帯である秋田県北鹿地域を事例に,鉱床と密接に関連する火山活動,とりわけバイモーダル流紋岩の化学的性質を述べる.また,幾つかの代表的鉱床について,胚胎場の特徴や,鉱床を構成している単位鉱体や単位鉱化帯などの規模や特徴を報告する.
  • 大竹 翼, 鈴木 陵平, 山田 亮一, 申 基澈, 昆 慶明, 佐藤 努
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本研究の目的は,黒鉱鉱床の周辺部に産する鉄やマンガンに富む化学堆積岩を採集し,鉄安定同位体比を用いて,当時の北鹿海盆における酸化還元環境や海底熱水活動と大規模黒鉱鉱床の形成要因との関係性を明らかにすることである.分析の結果,黒鉱鉱床形成期および200-300万年後までの試料のδ56Fe値は,-1.75‰から+2.02‰と大きく分別していた。このことから,当時北鹿海盆の一部が局所的に非酸化的になっていたと考えられる。また,黒鉱鉱床を伴う試料が-0.80から+2.02‰と56Feに富んでおり,比較的分別の程度が小さい一方で,黒鉱鉱床を伴わない試料は-1.75から+0.69‰と56Feに乏しく,より大きな分別を示した。これは黒鉱鉱床形成時には活発な熱水活動により熱水からの溶存鉄のインフラックスが大きかったこと,また,黄鉄鉱の沈殿により溶存鉄が56Feに富むようになったことが原因と考えられる。
  • 塚本 雄也, 掛川 武
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    Mnに富んだ堆積物は、海底熱水活動の存在や古環境の酸化還元環境を評価するためによく使われてきた。北鹿地域は黒鉱鉱床の多産地域としてだけでなくMnに富んだ層が存在していることでも知られている。そのMnの起源はまだあまりわかっていないことからMnに富んだ層が黒鉱鉱床形成期後の海底熱水活動による産物かどうか考察することを研究目的とする。
     小雪沢では3つの沢において地質調査を行った (ルートA、B、C)。ルートAでは貫入岩であるドレライトを見ることができた。ルート Aで見られたドレライトは赤色、もしくは赤褐色の熱水変質が見られた。このルートAにおいて、化学分析の結果、Mn に富んだ層を発見することができた (3.7 wt%、1.8 wt%)。その一方でルートAから300 m ほどしか離れていないルートBのドレライトにおいて赤色変質は見られなかった。ルートCと茂内では”R2”を熱源とした熱水活動の跡が見られた。ただし、ここではMnに富んだ層は見られなかった。            
  • 黒田 敦弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    本研究地域はインドネシアでも有数の金鉱床が集中するジャワ島西部に位置し、チサダン地域での地表調査がPT AGC Indonesiaによって2007年より開始された。しかしながらこの調査によって金鉱化作用に関連した地化学異常が認められたものの、開発に至るまでの基礎情報が不足しているのが現状である。そこで本研究ではチサダン地域に見られる金鉱化作用の特徴を採取した露頭・ボーリングコア試料を用いて、地質学・鉱物学的な観点より明らかにすることを目的とした。同定された変質鉱物である緑泥石・セリサイトの組み合わせより鉱化流体のpHが中性付近であったことが判明した。鉱石鉱物としては黄鉄鉱、黄銅鉱が支配的であり、少量の閃亜鉛鉱、方鉛鉱、銀鉱物も共生していた。エレクトラムは他形、又は半自形鉱物として他の硫化鉱物と共生して晶出していた。さらに石英脈は4つの異なるBandに分類され、エレクトラムは氷長石と相関があることが分かった。
  • 池端 慶, 石橋 純一郎, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    現世と過去の海底熱水性硫化鉱物の銅同位体比の特徴を明らかにする目的で南部マリアナトラフの背弧拡大軸上(Yamanakaサイト)および拡大軸から離れた海丘頂部に位置(Pikaサイト)する海底熱水活動域から採集した試料と、三波川帯の2つの別子型鉱床から得られた試料中の黄銅鉱の銅同位体比をfs-LA-MC-ICP-MSにより分析した。Pikaサイトのチムニー中の黄銅鉱の銅同位体比はδ65Cu= -0.7-+0.8‰であり、Yamanakaサイトのチムニー中の黄銅鉱は4‰を超える変動幅を示し(Ikehata et al., 2012)、最大値は+4.2‰である。これらの同位体比の変動は、初生黄銅鉱からの銅の溶脱と再沈殿時の同位体分別や、低温で形成された銅二次鉱物起源の銅の混入など複数の過程で生じたと考えられる。2つの別子型鉱床の黄銅鉱の銅同位体比は0.5‰以下の狭い変動幅を示し、形成後の続成作用や広域変成作用時の再結晶作用により、初期の同位体変動幅は減少したことを示唆する。
  • 上杉 宗一郎, 高橋 嘉夫, 田中 雅人, 柏原 輝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、鉄マンガン団塊中へ選択的な濃集が示唆されているヒ素(As)とモリブデン(Mo)、及びヒ素と同族のアンチモン(Sb)の濃集機構に注目した。実験より、Asは鉄水酸化物に濃集している一方で、Moはマンガン酸化物(δ-MnO2)に選択的に濃集していることがわかった。このことは、構造的に未解明な点が多い海水起源鉄マンガン酸化物の主要鉱物であるFe-vernaditeにおいて、鉄水酸化物とδ-MnO2が微量元素の吸着サイトとして独立に機能することなどを示す。一方、Sbは、同族でpKaが類似するAsに比べて濃集度が大きかった。これは、アンチモン(Sb5+)が構造や中心イオンのサイズが類似しているFe3+やMn4+の構造に取り込まれ易いためと考えられる。
  • 田中 和也, 川本 大祐, 大橋 弘範, 岡上 吉広, 横山 拓史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海底資源としてマンガンクラストが注目されている。海水中でのPt/Pd濃度比は約1であるがマンガンクラスト中のPtはPdと比べて100倍以上濃縮していることが報告されている。この現象はPt/Pd異常と呼ばれこの原因は解明されていない。Pd(II)の吸着挙動は明らかになっていない。またPt(II)のδ-MnO2 (IV)への吸着挙動は報告されているが海水条件での結果は報告されていない。そこで本研究では海水条件(pH 8、Cl-濃度 0.56 mol/dm3)におけるPd(II)、Pt(II)のδ-MnO2 (IV)への吸着挙動をから、Pt/Pd異常を解明することを目的とした。その結果吸着率変化の初期の時間ではPdが多く吸着し、その後やや減少しつつ一定となった。一方、Ptは直線的に増加し、24時間後にはPdの吸着率を超えた。これがPt/Pd異常の原因だと考えられる。
  • 安川 和孝, 中村 謙太郎, 藤永 公一郎, 町田 嗣樹, 大田 隼一郎, 高谷 雄太郎, 加藤 泰浩
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    講演者らは,インド洋の広域をカバーする合計1,663試料の深海堆積物の全岩化学分析を実施した.その結果,インド洋レアアース泥の全岩化学組成には生物起源リン酸カルシウムと海水起源マンガン酸化物の影響が強く反映されていることが明らかとなった.これは,インド洋におけるレアアース泥の生成を支配する重要な因子が「堆積速度の遅さ」であることを示唆している.このことを踏まえると,インド洋でレアアース泥が海底面付近に存在する可能性が高い海域として,(I) 東部インド洋Wharton海盆南~南東部,及び (II) 中央インド洋海盆南部の2つが挙げられる.
  • 藤田 豊久
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 1A14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海底鉱物資源の中からマンガン団塊を除くコバルト・リッチ・クラスト、海底熱水鉱床鉱物、海底の泥の海底鉱物資源から金属および鉱物回収のための選鉱学の応用についてその特徴を紹介する。
  • 池田 和隆
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: S1  鉱物資源の地球化学~陸上鉱床から海底鉱物資源まで~
    セッションID: 1A15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    水中で放射能探査を行う場合、水による減衰が大きいため、検出器は地表面(海底、湖底)から一定の距離でほぼ接した状態で測定する必要がある。その際、測定装置が軟らかい泥の中に埋まってしまうと、ジオメトリーが変わり、放射線強度が大幅に変化する。

    水中放射能探査の測定精度を上げるために、測定装置の周囲をタンクで囲み、タンクの中に水や燃料などの液体を充填する。タンク内の液体が遮蔽体となり、測定装置が地表面に到達した時や曳航した時に舞い上がる軟泥質の物質からの放射線は減衰する。更にタンクによって底面積が広くなって軟泥質中に埋もれにくくなり、たとえ軟泥質中にめり込んでも遮蔽体によって検出器のジオメトリーは一定に保たれ、検出器底面が接する地表面の放射線強度のみを測定することができる。
  • 川口 慎介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 1A16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
      演者らはこれまでに,大規模地震や海底科学掘削の後に,ただちに海洋研究調査を実施してきた。調査の結果,大規模地震や海底科学掘削といった海洋底環境擾乱に対して,周囲の海水・海底の生態系が迅速に応答すること,またその生態系の応答は擾乱に伴う物理・化学場の変化と調和的に説明できることが明らかとなった[Kawagucci et al., 2012 Sci. Rep.; 2013b G-cubed; Nakajima et al., 2005 PLOS ONE]。これらの成果は,(天然に生じる)地震や(少なくとも地球科学研究業界的にはその実施が承認されている)科学掘削の機会に(いわゆる理学的な立場で)海洋研究調査を実施した結果としてえられたものである。今後もこうした地震や科学掘削などの(擾乱を目的とした人間活動ではない)海洋底擾乱の発生を把握し,地球化学を中心とした海洋科学調査を積み上げることは,(社会が要請する)環境影響評価事業への科学者の貢献の一つと言えるだろう。
G1  大気微量成分の地球化学
  • 林 健太郎, 常田 岳志, 長谷川 利拡
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 1B01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    大気-陸面境界は窒素循環の重要なインターフェースであり,多様な化学種が多様な過程を通じて大気と陸域を行き来する.二酸化炭素濃度の増加(高CO2)や気候変動などの環境変動は窒素,炭素,水などの循環に影響を及ぼす.これらの影響の相互作用はさらなる撹乱をもたらし,その未知は将来予測に大きな不確実性を与える.我々の研究は,イネ生育や水田の炭素・窒素循環の環境変動応答の解明および持続可能なコメ生産に資する適用・緩和技術の開発を目的とする.本発表では,大気-水田間の窒素交換過程に絞り,研究の現状と今後の展開への期待を述べる.
  • 葛西 眞由子, 時枝 隆之, 谷口 雄哉, 伊波 はるな, 中山 典子, 小菅 瞭吾
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    富栄養湖沼は大気二酸化炭素の除去源となりうるかを調べるため日本を代表する富栄養湖沼手賀沼において表面水二酸化炭素濃度の通年観測を2013年4月から2015年5月にかけて実施した。この湖沼の大気への寄与を明らかにする。
    表面水二酸化炭素分圧は430から14000μatmの間にあり、常に大気二酸化炭素分圧(約400μatm)を上回っていた。すなわち手賀沼は大気二酸化炭素の放出源となっていた。手賀沼全体から大気へ放出された二酸化炭素は2013年と2014年でそれぞれ730MgC、540MgCと見積もられた。湖内の全炭酸の収支バランスから、湖内での高い生物生産のために消費される無機炭素(4,800MgC/年)は、湖水内での生物による有機物の分解(2,600MgC/年)、河川から(2,200MgC/年)、そして堆積物から(1,900MgC/年)の供給により支えられていた。
  • 豊田 栄, 吉田 尚弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    温暖化や成層圏オゾン層破壊をもたらす一酸化二窒素(N2O)のisotopocule比(非対称NNO分子内の15N分布も考慮した同位体比)はN2Oの起源、生成・消滅過程や全球収支の推定に有効な指標である。しかしその測定法は前処理に煩雑な操作を必要とし、これまでに報告された自動前処理法は量が限られた試料や低圧の試料には適用が困難である。本研究では、種々の大気試料の一部を定量的に真空ラインに導入し、N2Oの低温濃縮、精製を行ってGC-IRMSに導入する一連の前処理を自動で行う装置を開発した。1試料の分析所要時間は最短40分、N2O 4 nmolを含む大気試料(約300 mL)を分析した場合の窒素、酸素同位体比および分子内15N席選択(SP)の精度はそれぞれ0.1、0.2、0.5パーミル以下である。
  • 坂田 昂平, 坂口 綾, 為則 雄祐, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海塩粒子と微量気体との反応により生成するハロゲン化合物は様々な大気化学反応の引き金となるが、大気環境の違いによるハロゲン化合物の生成過程の違いに関しては不明瞭な部分がある。そこで、本研究では都市大気(東広島)、北太平洋、南半球の西部太平洋、南極海にて採取したエアロゾルの主要イオン濃度およびX線吸収微細構造(XAFS)法によるナトリウム(Na)化学種解析を行い、各地域における主要な塩素消失の反応の決定を試みた。


    東広島では海塩粒子と硝酸もしくは五酸化二窒素との反応が卓越していたのに対して、人為起源の寄与が小さい南半球の試料に関してはヒドロキシルラジカル(OH・)やオゾン(O3)との反応が卓越していた。また、人為起源の影響を受ける北太平洋では硝酸や硫酸だけでなく、OH・やO3との反応も生じていた。このように、人為的活動の影響に違いが、海塩粒子と微量気体との反応過程に大きく影響を及ぼすことが示唆された。
  • 栗栖 美菜子, 宮原 彩, 山川 庸芝明, 宮本 千尋, 坂田 昂平, 飯塚 毅, 植松 光夫, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    人為起源エアロゾル中の鉄はその溶解性の高さから、HNLC海域における植物プランクトンの生産性を促進し、炭素循環にも影響を与えるとして注目されている。本研究では、エアロゾルを粒径別に採取し、鉄化学種と鉄安定同位体比の2つの視点から研究を行った。人為起源エアロゾル中の鉄は主に酸化鉄として存在していることが分かり、また、人為起源エアロゾル中の鉄安定同位体比を自然起源と明確に区別して決定することに成功した。本研究で得られた人為起源鉄の非常に低い安定同位体比は燃焼過程における速度論的同位体効果によって説明される。この鉄安定同位体比を用いてHNLC海域の鉄の収支を考えると、人為起源エアロゾル中の鉄は無視できないことが示唆された。
  • 岩本 洋子, 持田 陸宏, Sandric C. Y. Leong, 石坂 丞二
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海面に生じた泡の破裂(飛沫)から生成するエアロゾル(PMA)の化学組成は元の海水とは異なり、特にサブミクロン粒径範囲で有機物に富むことが報告されている。有機物はPMAの雲凝結核能を変化させるため、その化学的特徴を明らかにすることはエアロゾルの気候影響を理解するうえで重要である。本研究では、植物プランクトンを培養した海水を用いたエアロゾル生成実験を行い、質量分析計を用いて有機エアロゾルの質量スペクトルを取得した。エアロゾルに含まれる有機物の質量割合は海水に含まれるプランクトン量と共に増加し、生物起源有機物がPMAの組成に寄与していることを確認できた。また、生成されたエアロゾルに含まれる有機物へは炭化水素系の有機物の寄与が実大気エアロゾルと比較して大きいことがわかった。
  • 望月 智貴, 宮﨑 雄三, 河村 公隆, 小野 かおり, 和田 龍一, 高橋 善幸, 三枝 信子, 谷 晃
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    低分子ジカルボン酸の中のシュウ酸は有機エアロゾルの主成分の一つであり、これは水溶性が高いことから雲や雨の凝結核となりやすく、地球の放射収支や水循環に影響を及ぼす。本研究は、森林植生から放出されたテルペン類由来のシュウ酸エアロゾルを生成する環境要因を明らかにするため、2012年7月に富士北麓カラマツ林の樹冠直下でテルペン類濃度、シュウ酸濃度、O3濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度を同時に測定した

    イソプレン濃度、シュウ酸濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度は日中に高くなった。シュウ酸濃度はO3濃度、イソプレンとα-ピネンSOAトレーサー濃度と有意な正相関があった。これらの結果より、テルペン類からシュウ酸の生成はサンプリング時間(3時間)内で速やかに進行していることが観測より示唆された。さらに、シュウ酸濃度は硫酸イオン濃度と有意な正の相関があり、テルペン類の酸化によるシュウ酸生成過程においてエアロゾル酸性度の関与が示唆された。
  • 宮崎 雄三, 川上 裕美, 竹内 友美, 河村 公隆, 中路 達郎, 日浦 勉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G1  大気微量成分の地球化学
    セッションID: 1B08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では落葉広葉樹林において群落レベルで人工的に窒素を散布し、数か月・年スケールでの植生起源二次有機エアロゾル(SOA)質量生成への影響を評価することを目的とした。北大苫小牧演習林において、2012年4月から粒径別エアロゾル試料の採取を約1週間毎に継続し、2013年・2014年に単年当たり100 kgN ha-1の窒素(尿素)をフラックスタワー周囲に人工散布した。窒素施肥の植生起源SOA質量への影響を施肥後1年目と2年目において施肥区と対照区の比較から評価した。結果として、植生起源SOAの中でもα-ピネンの初期酸化生成物であるピン酸が春と落葉期の秋季(10月)に質量濃度増加を示す季節変化を示した。窒素施肥の前後で施肥区でのピン酸質量比は秋季に有意な増加を示し(~30%)、この増加は林床付近(根/落葉/土壌)におけるα-ピネンの放出増加に起因することが示唆された。
G16 固体地球化学(全般)
  • 大場 武, 谷口 無我, 髙木 健太, 左合 正和, 池谷 康祐, 角皆 潤
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    大涌谷火山ガスを定期的に採取し,化学組成および安定同位体比の変動を調べた.水蒸気のδDは2014年11月から2015年1月まで,-51‰付近で安定していたが,同年2月から低下し始め,同年4月24日には-67‰に下落した.この二日後に群発地震が発生し始め,δDは5月8日に-56‰,6月2日には-52‰まで回復した.水蒸気同位体比の時間変化は,シーリングによりマグマ性水蒸気が一時的にマグマの近傍で蓄積し,2015年4月下旬に急激に解放された可能性を示唆している.一方,H2ガスのδDは,2013年7月から2014年9月まで-627~-615‰と比較的狭い範囲に限定されていたが,2014年10月から12月の期間,-675~-654‰の範囲に急激に低下した.2015年1月には-625‰まで回復し,2015年2月以降は,-607‰以上の高い値を維持している.H2ガス同位体比と水蒸気の同位体比を組み合わせて計算される同位体交換反応平衡温度は群発地震の発生よりも二ヶ月先行して上昇した.
  • 角皆 潤, 程 林, 池谷 康祐, 小松 大祐, 中川 書子, 篠原 宏志
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    火山の噴気温度の絶対値やその時間変化は、火山活動に関する重要な指標となる。しかし、活火山の噴気孔における直接測定は危険を伴う上に、実現が難しいことが多い。また赤外放射を利用した遠隔測定は、観測距離が100 mを超えると著しく確度が低下し、また火山灰で視界が遮られると測定不能になる。そこで本研究では、セスナ機を用いて桜島のプルーム試料の採取を行い、噴煙の中に含まれる火山由来の水素分子の安定同位体組成を利用した噴気温度遠隔測定に挑戦した。
  • 小林 真大, 角野 浩史, 長尾 敬介, Ray Burgess, 石丸 聡子, 荒井 章司, 芳川 雅子, 川本 竜彦, 熊谷 仁孝, 小 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
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    ハロゲンはマントルへと沈み込んだ水のよいトレーサーになると期待されている。スラブ起源流体による影響がマントルのどこまで及んでいるかを明らかにするため、マントル捕獲岩のハロゲン組成を求めた。火山フロントで産出した試料は、Iに富む海底堆積物中の間隙水によく似ていた。同様な組成は背孤側の試料にもいくつか見られた。プレート内の火山活動で産出した試料は、マントル的な組成から元素分別したような組成である。
  • 外山 浩太郎, 寺門 靖高
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    石灰岩は、主にカルサイトから構成されているが、一部、ドロマイトを含むものが存在している。多くの場合、ドロマイトは、もともと存在していたカルサイトからドロマイト化作用により二次的に形成されると考えられているが、ドロマイト化のメカニズムについては不明な点が多い。ドロマイト形成メカニズムを検討するために、ドロマイト質石灰岩中のカルサイト部分とドロマイト部分について酢酸(あるいは塩酸)を用いて選択的に溶解し、それぞれの部分に含まれる微量元素含有量を求めた。

    Ba、Srは、ドロマイト部分よりもカルサイト部分で高い濃度を示し、Mn、Fe、Zn濃度は、ドロマイト部分で高くなる傾向を示す。SrやBaは、イオン半径がCaよりも大きく、イオン半径の小さいMgよりもCaと置換しやすく、カルサイト中に多く含まれると考えられる。一方、Mn、FeやZnは、イオン半径がMgと似ているため、ドロマイト中に、多く置換していると考えられる。
  • 板野 敬太, 飯塚 毅
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    モナザイトは, 地質年代系として火成・変成岩に幅広く用いられている. また, 特徴として, 鉛の拡散速度は遅いにも関わらず, 再結晶化により年代のリセットが起きることが指摘されてきている. したがって, 得られる年代の解釈は重要であり, 岩石・鉱物組織とともに元素組成などから制約を与えることが必要となる. しかし, 温度圧力履歴・バルク組成の異なる岩石に含まれる様々な起源のモナザイトとその微量元素組成の関係性については未だ明らかでない. そこで,モナザイト微量元素組成と形成環境の関係性を明らかにするため, 変成岩などに含まれるモナザイトの微量元素組成を比較する. 各微量元素を選択的に取り込む鉱物の存在量がモナザイト微量元素組成に大きく影響しており, モナザイト微量元素組成はどのような鉱物と共成長し, それら鉱物の量比はどうであったかという形成環境を制約する指標となり得ることが示唆された.
  • 坂田 周平, 岩野 英樹, 檀原 徹, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    高時間分解能でのジルコンウラン-トリウム-鉛年代測定法はマグマ活動の時間スケールを調べる上で重要な手法であるが、数万年程度の時間分解能で現象を議論するにはジルコン晶出時の初生放射非平衡の影響を正確に補正することが必須である。本研究では第四紀に属する若いジルコン試料の化学組成分析と放射性同位体分析を通じて、独立した二つの手法で非平衡補正のための補正係数を算出し、両者を比較・検討することでその信頼性を評価した。また、島根県三瓶火山の噴出物である三つのテフラより分離されたジルコンのウラン-トリウム-鉛年代測定を行い、年代決定手法の評価及び高温におけるマグマ活動の時間スケールを議論する。
  • 服部 健太郎, 坂田 周平, 山本 伸次, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    近年、ジルコンのU-Pb系の閉鎖系が保たれないリバースディスコーディアという現象の存在が指摘されている。そのような現象が、μmスケールで見られるかどうかについては、議論が続いている。この問題を解決するには、ジルコン全面においてPb, Uの分布を測定し, ジルコン内部の閉鎖系が成立しているかを調べることが重要である. 本実験では, クレーター直径5 µm, 分析深さ5 µmで年代測定を行い, さらにジルコン全面のマッピング分析をおこなった. 本発表では, リバースディスコーディアが観測されたジルコン粒子に対して年代マッピング分析を行い, 二次的な鉛移動の有無を検証する.
  • 安間 了, 折橋 裕二
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    付加体層序を検討するため屋久島に分布する四万十累層群にふくまれる凝灰岩からジルコンを分離し、U-Pb年代測定を試みた。この結果、島の東部でおよそ30 Maの、西部でおよそ55 Maの堆積年代を得た。およそ42 Maには層厚が100 mにも達する厚い凝灰岩層をもたらすような巨大噴火があったようである。屋久島の四万十累層群は花崗岩によって焼かれており微化石がよく保存されていないため、地層の姿勢と上下判定から西側上位の層序が踏襲されてきたが、これを刷新することができた。凝灰岩は精度よく年代を決定できるので、これに基づいた堆積物層序の再検討は、従来の付加体地質学の精度をより高めるであろう。
  • 折橋 裕二, 新正 裕尚, 安間 了
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,西南に本外帯(以下,外帯)花崗岩の成因について,制約条件を与えるため,九州地方南部,外帯花崗岩類が分布する屋久島,種子島,南大隅,尾鈴山,高隈山,村所,野間峠,金峰山,柴尾山,日置,赤仁田,熊ヶ岳,市房山,大崩山及び甑島の15貫入岩体について着目し,採取した22試料について,LA-ICPMS分析法による高精度U-Pb年代測定を行った.また,同花崗岩質マグマ活動史を明らかにした.本講演では,これらの結果に基づき,九州地方に分布する中期中新世外帯花崗岩類の新しい成因モデルについて提唱する予定である.
  • 昆 慶明, 江島 輝美, 森田 沙綾香, 高木 哲一
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    阿武隈花崗岩は環太平洋地域に代表的な白亜紀大規模花崗岩体のひとつであり,その形成史は白亜紀火成活動を解明するうえで重要である.これまで,阿武隈花崗岩体の形成史について多くの先行研究が行われてきた.岩相および露頭観察による貫入関係から,この地域の岩石は斑レイ岩が最も古く,斑レイ岩や変成岩類に貫入する「古期」花崗岩,そして古期花崗岩に貫入する「新期」花崗岩があると考えられてきた.しかしながら,これまで得られてきた黒雲母K-Ar 年代や角閃石Ar-Ar 年代に於いて,有意な年代差は報告されていない.

    そこで,我々は花崗岩、斑レイ岩試料からジルコンを分離し,そのU-Pb 年代測定を行う事で,マグマの貫入時期を正確に評価した.その結果,斑レイ岩の貫入は周囲の花崗岩と同時期である事,新期- 古期花崗岩に有意な年代差が無い事,阿武隈地域の東から西にかけて貫入年代が若くなる傾向がある事,が明らかになった。
  • 高地 吉一, 折橋 裕二, 山本 鋼志, 大藤 茂
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    南部北上帯デボン系および三郡変成帯・蓮華変成岩類の後背地・堆積場を,砕屑性ジルコン年代分布およびK-S検定を用いて定量的な拘束を試みた。蓮華変成岩類の砕屑性ジルコン年代分布は,東京大学地震研究所および名古屋大学環境学研究科設置のLA-ICPMSを使用して測定した。後背地の火成ジルコンのコンパイルは,ゴンドワナ大陸北東部周辺に位置していたとされる,オーストラリア,東南極,北・南中国地塊を対象に行った。

     コンパイル結果,測定結果を用いてK-S検定を行った結果,南部北上帯デボン系および三郡変成帯・蓮華変成岩類の砕屑性ジルコン年代分布は,オーストラリア南東部(当時のゴンドワナ大陸北東部縁辺)と一致し,他とは一致しないことがわかった。この結果より,南部北上帯デボン系および蓮華変成岩類の後背地・堆積場は,Okawa et al. (2013)が示した位置(ゴンドワナ大陸北西部)よりも東側にあったと推定される。
  • 山本 伸次, 小宮 剛, 越田 渓子, 兵藤 博信, 佐藤 佳子, 熊谷 英憲, 渋谷 岳造, 下條 将徳, 坂田 周平, 平田 岳史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G16 固体地球化学(全般)
    セッションID: 1B20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    地球最古の岩石として知られるカナダ・アカスタ地域(~40.3 億年)およびラブラドル地域(~39.6億年)に産する花崗岩質片麻岩からジルコンを分離し、段階加熱による40Ar/39Ar年代分析およびジルコン中に含まれる包有物の相同定を行った。中性子未照射ジルコンの段階加熱では、40Arは1000-1100?Cを越えた領域で多量に放出され、中性子照射後の40Ar/39Ar測定の結果、ラブラドルのジルコンから43.9 ± 3.4億年、アカスタのジルコンから21.4 ± 1.7億年という値が得られた。一般に、ジルコン結晶中にKは含まれないため、これら放射起源Arの放出はジルコン中の含カリウム包有物の寄与が考えられる。ジルコン50粒子(非段階加熱)を顕微ラマンおよびSEM-EDSを用いて包有物分析をおこなった結果、カリ長石・白雲母などの他に、顕微鏡観察からは流体やメルト包有物とみられる相も確認された。本発表では、これらジルコンから得られた年代学的・鉱物学的・地質学的な意義について議論する。
  • 賞雅 朝子, 中井 俊一, 飯塚 毅
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 1B21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     地球の形成過程にはいくつかのモデルが提唱されているが、地球形成の最終段階でジャイアントインパクトを経験し、月が形成され、マグマオーシャンが形成されたというのが広く受け入れられているモデルの一つである。このような集積過程を経て、最終的に金属鉄からなるコアと珪酸塩からなるマントル-地殻に分化したとされている。このコアとマントル-地殻の分化過程や、その後のコアとマントルの再平衡・相互作用について、タングステン同位体を用いた地球化学的な観点からの研究を紹介する。
  • 武多 昭道, ロット カーステン
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 1B22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    地球深部、特に地球外核の化学組成を知ることは、地球及び太陽系の形成史並びに地磁気の起源を理解する上で重要である。我々は、地球深部の化学組成の測定のための、ニュートリノを用いた新しい手法を考案したので、報告する。ニュートリノは時間と共に別の種類のニュートリノに変化し、その確率は、周囲の電子数密度に依存する。大気中で生成されて地球を貫通したニュートリノが他の種類のニュートリノに変化する確率を測定することで、地球深部の電子数密度を測定することが可能となり、物質密度と比較することで、地球深部の平均化学組成を得ることができる。
G14 初期地球と生命起源の地球化学
  • 関根 康人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 基調講演
    セッションID: 1C01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    近年の太陽系探査によって、地球以外にも液体の水を大量にたたえた天体が存在し、その化学組成や酸化還元状態、温度環境まで明らかになろうとしている。本発表では、これらの成果をレビューし、比較惑星海洋学ともいうべき学問体系が構築されつつあることを紹介する。また、比較惑星海洋学における大目標として、1)太陽系に存在する海洋(火星、氷衛星内部)の化学的多様性の根本原因の解明、そして2)これら天体の探査による初期地球における生命の起源への示唆の2つが挙げられる。本発表では、これらについても議論する。
  • 玄田 英典
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: 招待講演
    セッションID: 1C02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    地球の多くの特徴(海、プレートテクトニクス、磁場、生命の存在など)が初期地球と深く関連している一方で、初期地球に関する研究は、物的証拠が限られていることから、数々の困難をともなっている。一方、惑星形成論の立場から、初期地球がどのようなものであったのか(もしくはどうあるべきか)を推測することはある程度可能である。初期地球を考える上で、地球がどのようにして作られたのかを知ることは、地球のその後の進化の初期状態を与えるため重要である。そこで、本講演では、地球を含めた太陽系の惑星たちがどのようにして作られたのかについて、我々の研究成果を交えて最新のレビューを行う。
  • 小宮 剛
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     海水のCO2濃度が高かった太古代では、熱水もCO2に富み、熱水変成作用時に炭酸塩鉱物が大量に生じるため、Ca-Al鉱物や緑泥石などの苦鉄質鉱物の形成が阻害され、アルカリ性の熱水が生じることが知られている。本研究では、特に親銅元素の挙動の違いについて着目し、太古代と顕生代の海洋底変成作用を受けた岩石の化学組成を比較した。現在の海洋底では熱水変成・変質作用により、母岩のCuは増加し、Znは減少する傾向が見られる。一方、太古代では、Cuは一部増加している傾向があるものの、全体としては減少している。特に、珪化作用時に、顕著に減少するため珪化岩はCuに非常に枯渇している。一方、Znは増加しているが、珪化岩では顕著に減少している。以上の結果は、中央海嶺下での海洋底変成作用では、CuやZnは岩石に固定されるが、オフリッジでの珪化作用で、それらが放出されたことを示唆する。
  • 小林 憲正, 阿部 仁美, 伊勢 絢一, 癸生川 陽子, 依田 功, 福田 一志, 近藤 康太郎, 小栗 慶之
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
      弱還元型大気中での有機物生成の検証のため,二酸化炭素・メタン・窒素・水蒸気混合気体への陽子線照射・火花放電,メタン (5%)・窒素 (95%)混合気体(模擬タイタン大気)への陽子線照射・γ線照射を行い,生成物中のアミノ酸分析などを行った。

     火花放電では、メタン混合比30%以下ではアミノ酸が検出されなくなったが,陽子線照射では、メタン混合比が1%でもアミノ酸の生成が確認された。このことから、もし原始大気の組成が極めて弱い還元型であった場合、雷によるアミノ酸等の生成は期待できないが、宇宙線によるアミノ酸等の生成が可能であることが示唆された。

     模擬タイタン大気への陽子線照射では気相中でもやが生じ,その加水分解でアミノ酸が生成した。タイタンでのアミノ酸前駆体の生成を考える場合,高層大気より,むしろ濃厚な下層大気中で宇宙線の作用による生成が重要であることが示唆された。
  • 三村 耕一, 西田 民人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    炭素質隕石や彗星の衝突時には、衝撃波がエネルギー源となって有機物や含水鉱物に作用し、炭素質隕石や彗星の内部を反応場とした様々な反応(衝撃反応)が起こると考えられる。地球生命が発生する以前から存在していたと考えられる隕石や彗星の有機物の衝撃反応による生成物の知見は地球生命の発生につながる化学進化過程において重要な情報となりうる。芳香族化合物の基本構造であるベンゼンは反応性に富む化学的性質を示すとともに、隕石や星間分子中に、そして、その誘導体は生体内にも存在する。よって、ベンゼンの衝撃反応は研究対象として好適である。一方で、ベンゼンは常温常圧下で液体であるため、高圧領域での衝撃反応ののち、周囲からの汚染と損失なしに反応生成物を回収・分析することは非常に困難であった。本発表では、新たに開発した液体用反応容器を用いて行った液体ベンゼンの衝撃反応について報告する。
  • 永沢 恵理子, 三田 肇
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    化学進化で、ポリアミノ酸・タンパク質の生成が重要になるが、アミノ酸の縮合反応についてはまだ不明な点が多い。本研究では、MAMの加熱溶融系にアミノ酸を添加して生成するアミノ酸共重合体の化学組成を明らかにするために、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)を用いて質量分析を行った。
  • 高橋 絢子, 薮田 ひかる
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、生命起原に至る原始細胞の化学進化を理解するため、ホルムアルデヒドとアンモニアのメイラード・タイプ反応で生じる微小球状有機物のサイズ・形態・組成の変化を明らかにした。その結果、反応時間と共に微小球のサイズと形態は多様化した一方、官能基組成は一定でアルキル炭素と芳香族炭素(π共役系)の両方を有した。これらの結果より、この微小球状有機物が両親媒性分子の自己集合により形成され、原始細胞様の成長・分裂に繋がる挙動を示すことが明らかとなった。
  • 高橋 淳一, 小林 憲正, 田村 元秀, 梅村 雅之, 加藤 政博
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     自然科学における最大の謎のひとつに、地球上の生命体を構成する分子の非対称性起源の問題がある。アミノ酸に代表される生体分子の多くは、鏡像対称な構造(L体、D体)を取り得るが、地球上の生命体が用いているタンパク質は基本的にLアミノ酸のみから構成されている。このような非対称性の起源に関しては諸説があり,未だ実験的にも理論的にも解明されていない。本プロジェクト研究では、これまで独立して研究を進めてきた研究チーム間の連携を実現し、また、理論化学や生物学など、関連する自然科学研究機構内外の研究者を結集し、宇宙観測、地上実験、理論計算の3つの方向からこの問題に取り組む体制を整え、この分野の世界的な研究拠点を形成することを目指す。
  • 三嶋 慎平, 大友 陽子, 掛川 武
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    生命の起源における重要段階であるRNAの誕生にはその構成物質であるリボースの利用性が問題である。実験的に水溶液中でのホウ酸複合体形成によるリボースの選択的安定化が示されているが、ホウ酸濃集を可能とする環境が必要となる。本研究では初期地球でホウ酸、および有機物が濃集しうる環境として海洋堆積物を想定し、その痕跡を発見するためにグリーンランド・イスア表成岩体中の変成堆積岩であるザクロ石-黒雲母片岩を観察・分析した。その結果試料中にホウケイ酸塩鉱物であるトルマリンとグラファイトの共存が確認され、トルマリンの詳細な組成分析と全岩組成分析結果から試料中のトルマリンは堆積物の続成・変成作用中に生成したことが示された。以上より海洋堆積物に濃集したホウ酸と、リボースなどの有機物が初期太古代に続成・変成作用を経ることでトルマリンとグラファイトが形成したことが判明し、これは初期地球においてホウ酸とリボースが複合体を作りうる環境が海洋堆積物中に存在した可能性を示唆する。
  • 青山 慎之介, 上野 雄一郎
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    地球最古の硫酸還元菌の活動記録は約35億年前まで遡る(Ueno et al., 2008)。しかし地球史を通じた硫黄同位体分別に着目すると、約24億年前の大酸化事変以前の硫酸塩鉱物-硫化鉱物間の硫黄同位体分別の多くは5‰以内である(Canfield & Raiswell 1999)。ところが、太古代でも熱水場に関連する岩石はδ34S = -40‰程度と34Sに大きく枯渇しており、熱水が硫酸を供給した可能性を示している。これを検証するため、西オーストラリア・ノースポール地域の変質玄武岩の四種硫黄同位体比を測定した。観測した硫化鉱物同位体組成バリエーションを説明するため、硫酸から生成しうる硫化物の同位体組成をモデル化した。その結果、95%の熱水由来質量依存硫酸に5%だけ大気由来の非質量依存硫酸を混ぜた硫酸を還元すると観測した同位体比を説明できること、Δ33Sの僅かなバリエーションは微生物的なプロセスで硫酸還元がなされたことがわかった。これらの結果は熱水が硫酸を供給したことを強く支持している。
  • 渋谷 岳造, 上野 雄一郎, 小宮 剛, 西澤 学, 北島 宏輝, 山本 伸次, 齋藤 拓也, 松井 洋平, 川口 慎介, 高井 研, 吉田 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
     原生代前期には赤道域まで海洋が凍結したという全球凍結イベントがあったとされている。全球凍結の原因については、様々な仮説が提唱されているが、地質記録に基づく大気CO2分圧の推定からはCO2がそれ自体で地球を温暖に保つために不十分だったのかどうかが明らかになっていない。そこで、本研究では南アフリカ、トランスバール超層群のオンゲレック累層 (全球凍結時に海水中に噴出した玄武岩質安山岩) の地質調査・試料採取を行い、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英に含まれている流体包有物の分析を行った。その結果、初生的流体包有物のCO2濃度は5.5 mmol/kg以下であることが明らかになった。また、計算の結果、大気CO2分圧は現在の約21倍以下であり、海水温を氷点温度以上に維持するのに必要なCO2分圧よりも低いと推定された。したがって、原生代前期全球凍結時の大気CO2分圧はCO2の温室効果だけで地球を温暖に保つには不十分であったことが地質記録から初めて明らかになった。
  • 齋藤 拓也, 渋谷 岳造, 澤木 佑介, 小宮 剛, 丸山 茂徳
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G14 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 1C12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    海洋化学組成の経年変化を理解することは、生物の出現や進化を理解する上で非常に重要であり、中でも塩化物イオン濃度は多細胞動物の生息を制限する重要な要素である。近年、太古代から原生代の海水塩化物イオン濃度は、過去の海洋地殻の玄武岩に伴う熱水性石英中流体包有物を用いた研究により推定されてきた。しかし、岩石学的な記載が不十分なため、海水組成を推定出来ていない可能性が十分にある。そこで、本研究では、22億年前の海水組成を保存している熱水性石英中の流体包有物を用いて詳細な記載に基づき初生的、二次的、その他の3つに分類した上で加熱冷却実験、PIXE分析を行った。得られた結果から推定された海洋塩化物イオン濃度は現在の海洋の数倍程度高い濃度であった。
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