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深海底の堆積物は長期的な環境変動,気候変動,生物生産量や種の変化を記録し連続的に埋没しており,現在および過去の海洋環境の情報を蓄積していると考えられる。海洋表層の生物生産の指標として,有機態炭素(TOC),炭酸カルシウム(CaCO3),生物起源ケイ素(Opal)などの親生物元素があげられるが,海洋表層の生物活動にはFe,Mn, Ni,Cu,Znなどの生物活性微量金属元素が必要とされており,親生物元素との関係を明らかにすることは古環境復元に貴重な情報となる。また,海底境界層におけるこれらの元素の移動循環過程を解明することは海洋における物質循環の解明につながる。本研究は2014年12月から2015年2月に行われた白鳳丸のKH-14-6次研究航海で,西部北太平洋から南太平洋で採取した表層堆積物中の親生物元素と微量金属元素の分析を行ったので,その分布や挙動について報告する。