日本地球化学会年会要旨集
2016年度日本地球化学会第63回年会講演要旨集
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口頭発表(第一日目)
G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
  • 菊池 早希子, 柏原 輝彦, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 1-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    本研究では微量元素の吸着挙動を微生物由来の水酸化鉄(BIOS)と合成水酸化鉄で比較した。セレン(Se(VI), Se(IV))およびセシウム(Cs)を対象として吸着実験を行った結果、陽イオンであるCsのBIOSへの吸着は合成水酸化鉄よりも増加したのに対し、陰イオンを形成するSe(IV), Se(VI)は合成水酸化鉄より減少することが分かった。ゼータ電位測定より、BIOSは合成水酸化鉄より幅広いpHで負電荷を帯びていることが明らかとなり、対照的な吸着量の変化はBIOS特有の電荷的な効果によるものと考えられる。一方で吸着量の減少の程度はSe(IV)に比べてSe(VI)の方が顕著であり、これらは固相への吸着様式の違いを反映していると考えられる。

  • 宮下 駿, 福士 圭介, 諸留 章二, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 2-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    有害陰イオンである亜セレン酸(Se(4))は酸性から中性条件の溶液中では除去する事は比較的容易であるが, アルカリ条件の溶液中では通常鉱物の表面電荷が負に帯電するためその限りではない. 著者らはこれまでに酸化マグネシウム(MgO)がpH10を超えるアルカリ溶液中でSe(4)に対して極めて高い除去能を持つこと示した(宮下 他, 2016地球惑星連合大会). またSe(4)の有効な取り込みには溶液中におけるMgOの水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)への変質が関連している可能性を提示した. 本研究ではSe(4)濃度を系統的に変化させた収着速度実験を行うと共に, 固体試料に取り込まれたセレンのX線吸収微細構造(XAFS)解析を用いて, MgOによるSe(4)の収着メカニズムを考察した.

  • 田中 和也, 川本 大祐, 大橋 弘範, 岡上 吉広, 横山 拓史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 3-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    鉄マンガン酸化物とは現在の海底に広く分布し,黒色の酸化物濃集体の総称である。海底の岩盤を被覆するものをマンガンクラストと呼ぶ。このマンガンクラストは様々な金属を濃縮していることで知られており、有望な海底資源として注目されている。近年海底の探査技術は発達してきたが海洋は広く深いため、貴金属のマンガンクラストへの濃縮機構を理解することは、有望海域を絞り込むために必要不可欠である。濃縮される金属の中でもPtとPdについては海水中でのPt/Pd濃度比は約1であるがマンガンクラスト中のPtはPdと比べて最低でも100倍以上濃縮していることが報告されている。この現象は"Pt/Pd異常"と呼ばれこの原因は解明されていない。この原因をマンガンクラストの主成分の一つであるδ-MnO2にPt(II)とPd(II)を吸着させるモデル実験を行い吸着挙動の差を比較することで"Pt/Pd異常"の解明することを本研究の最終目的としている。

  • 上杉 宗一郎, 田中 雅人, 柏原 輝彦, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 4-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    本研究では、鉄マンガン団塊へのヒ素(As)とアンチモン(Sb)の濃集機構の違いを明らかにすることを目的に、As、Sbの溶存時の化学構造の違い(Asは4配位4面体、Sbは6配位8面体)に注目し、As、Sbがマンガン酸化物および水酸化鉄へ吸着する際の吸着種についてX線吸収微細構造(XAFS)法と量子化学計算を用いて分子レベルで評価した。量子化学計算の結果より、水酸化鉄およびマンガン酸化物に対して、単核二座結合の相互作用エネルギーは、AsよりSbの方が大きいことが示された。これには構造の類似性が影響していると考えられる。XAFSおよび量子化学計算による吸着種の解析結果より、As、Sbのいずれも水酸化鉄には二核二座結合で吸着していた。また、マンガン酸化物に対するAsの吸着種は二座結合に比べて不安定な単核単座結合であり、Sbは単核二座結合であることが示唆された。これはSb(VI)の対称性やイオン半径がFe(Ⅲ)やMn(Ⅳ)のそれに類似しているためだと考えられる。

  • 田中 雅人, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 5-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    ゲルマニウムの同位体比は地球化学的な過程を反映し、δ74/70Ge ~ -40/00‐40/00程度の幅広いの同位体比をとることが報告されている。Pokrovskyらは鉄水酸化鉱物への吸着および共沈によって、水溶液に比べて1.7-4.40/00程度軽い同位体に富むことを報告している。我々は、これまでに6族元素の鉄およびマンガン(水)酸化鉱物への吸着に伴う四配位から六配位構造への変化によって大きな同位体分別を生じることを、X線吸収端微細構造(XAFS)法と量子化学計算により明らかにしてきた。本研究では、ゲルマニウムの吸着に伴う構造変化をXAFS法により調べ、量子化学計算により同位体分別を見積もり、構造変化と同位体分別の関係を明らかにすることを目的とする。

  • 川本 大祐, 栗崎 敏, 米津 幸太郎, 岡上 吉広, 徳永 信, 横山 拓史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 6-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    水圏の金濃度は溶存金化学種の鉱物表面への吸着により制御されている。代表的な溶存金化学種の1つに[AuCl4]-がある。この溶存金化学種は溶液のpHが上昇するにつれて配位子である塩化物イオンが逐次的に水酸化物イオンに置換し、[AuCl4-n(OH)n]-(n=1-4)となる。これら溶存種の鉱物表面への吸着はこの加水分解と深く関係していると考えられている。しかし[AuCl4]-の加水分解と[AuCl4-n(OH)n]-の吸着との関係性は明らかになっていない。そこで本研究では相対論DV-Xα計算を用いて各加水分解種の電子状態計算を行い,鉱物表面への吸着駆動力について検討した。

  • 岩月 輝希, 久保田 満, 林田 一貴, 加藤 利弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 7-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    深度500mの花崗岩地下水中のコロイドと希土類元素との相互作用,坑道の建設・閉鎖により生じる人為由来コロイドの研究を行った。地下水中には,0.1~100μm以上のケイ酸塩鉱物,鉄鉱物,炭酸塩鉱物,硫黄,有機物粒子が存在し,希土類元素は炭酸塩鉱物と擬似コロイドを形成している可能性が考えられた。また,閉鎖坑道において希土類元素を含むコロイドはセメント材料や粘土材料などに捕捉され,その移動が抑制されることが明らかになった。

  • 丹羽 萌子, 寺門 靖高
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 8-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    岩石が風化し溶出した成分と河川水の成分には密接な関係がある。本研究では花崗岩と渓流水の水質との関係解明を念頭におき、花崗岩と水との反応実験を行い、岩石・鉱物からの元素溶出過程の検討を行った。粉砕した花崗岩、長石、黒雲母の試料を装置内で蒸留水と反応させた。装置には空気を注入し、一定時間ごとに水を採取し、アルカリ度、各種イオンなどを測定した。また鉱物組成と元素の溶出量から鉱物の溶出割合を求め、実験後の鉱物は観察を行った。各花崗岩、鉱物からはCa2+の溶出が最も大きく、主な溶出源は方解石と考えられる。またFの溶出が多い試料ではFとCa2+の間に相関がみられ、観察から蛍石が発見された。元素の溶出量から鉱物の溶出割合を求め、長石類に溶出割合の違いを生じた。風化過程で生じる粘土鉱物を含む反応や化学的風化速度の算出、河川の水質との関係に関しても、検討を行っている。

  • 西山 直毅, 福士 圭介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 9-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    風化によって形成されたアモルファスシリカ変質層や粘土・鉄水酸化物の凝集体は、サブミクロン~ナノサイズの間隙(ナノ間隙)を持つ。近年、ナノ間隙中ではCaCO3の沈殿が阻害されるなど、ナノ間隙表面の反応性が鉱物粉末や単結晶の表面上とは異なることが分かってきている。このような違いを生む原因を議論する上で、ナノ間隙表面の電荷が有用な情報になると考え、直径2 nmと50 nmの間隙を持つ多孔質シリカを用いて酸/塩基滴定実験(イオン強度1, 100 mM)を行い、間隙サイズと表面電荷の関係を評価した。 イオン強度1 mMでは、間隙サイズが小さいほど表面電荷はゼロに近かった。すなわち、細い間隙ほど表面シラノール基が解離しにくい(>Si-OHが安定である)ことを意味している。一方、イオン強度100 mMでは、間隙サイズに依らずほぼ同じ表面電荷を示し、表面電荷(>Si-OHの解離しやすさ)の間隙サイズ依存性はイオン強度に左右されることが分かった。

  • 東 佳徳, 伊藤 正一, 渡邉 賢, 坂口 勲
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 10-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    アパタイトの水素同位体組成が、結晶化時のマグマの組成を反映しているのか、結晶化後の拡散した外部起源の水の組成を反映しているのかは不明瞭である.本研究では,水を拡散源としたアパタイトの水素拡散挙動を明らかにし、地球や天体内部における水-岩石相互作用の痕跡を解明するため,アパタイト水素拡散実験を行った. 全ての拡散プロファイルは、アパタイト中の水素拡散は、結晶に元から含まれている水素と拡散源の重水素との交換反応によって進行することを示した.Morocco産アパタイトの水素拡散係数は、Durango産アパタイトよりも約2倍大きく、活性化エネルギーは調和的であった.また、水素拡散の結晶異方性が見られ、c軸に鉛直方向の拡散係数は, c軸に平行方向と比べて数倍高い拡散係数を示した.以上より、本研究で明らかとなったアパタイト結晶の水素拡散挙動を考慮することで,これまで評価が難しかった比較的低温での水-岩石相互作用を,アパタイト結晶の水素同位体組成から評価できることを示唆している.

  • 近岡 史絵, 益田 晴恵, 川端 清司
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 11-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    近畿地方では近い将来、南海トラフ巨大地震が発生すると予測されており、津波による浸水被害が懸念される。東北地方での標本復元の経験に基づいて、被災した地質標本のうち、復元が困難である軟質岩試料の安定化処理法を確立できれば、津波被災に対して安全で確実な標本管理を構築できると考えられた。 本研究は、安定化処理法を開発する前段階として、浸水した軟質岩の受ける影響を解明することを目的に計画した。そのために、軟質岩を海水に浸水させた場合、どのような変化の過程を示すのか観察・分析を行った。 実験の結果、いずれの試料においても時間経過に伴い溶存成分が増加を続けた。また、塩水は超純水よりも軟岩との反応性に富むことがわかった。特にSiの濃度増加はイオン交換だけでは説明ができない。Mg, Mn, Feも同時的に溶出していることから、塩基性鉱物の溶解反応が進んでいることが示唆される。

  • 中村 仁美, 岩森 光, 千葉 紀奈, 常 青, 森川 徳敏, 風早 康平
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 12-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    断層が集まる構造線沿いには,深部起源の流体が上昇している可能性がある.近年,塩濃度やO-H同位体比の類似性から,有馬温泉水の起源をスラブ起源流体と関連付け,沈み込み帯規模の物質循環に関与している可能性が指摘されている(e.g., 風早ほか2014; Kusuda et al., 2014; Nakamura et al.,2015).また,有馬型温泉水の希土類元素(REEs)組成を統計的に解析することで,水-岩石間の反応を含めた流体の上昇過程と起源について新たな知見が得られつつある(Nakamura et al., 2016).本研究では,日本列島を二分する糸魚川静岡構造線沿いの温泉水について,深部由来の可能性のある泉源の調査と試料採取を行い,希土類元素の定量を行った.その結果,北部と南部ではREEパターンに顕著な違いが見られ,特に南部ではいくつかの独自的なREEパターンがみられることが分かった.これらの多様性の解析を行うことで,温泉水の起源と上昇過程について議論する.

  • 土岐 知弘, 新城 竜一, 布浦 拓郎, 眞壁 明子, 松井 洋平, 川口 慎介, 齋藤 誠史, 加藤 真悟, 中川 聡, 田角 栄二, 平 ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 13-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    2016年2月29日~3月17日にかけて,SIP「海のジパング計画」の一環として沖縄トラフの伊平屋北海丘及び伊平屋小海嶺(野甫サイト)において,地球深部探査船「ちきゅう」を用いた海底熱水域の掘削が行われた。掘削では,伊平屋北海丘においてアキサイト(掘進長:208.5 m),熱水活動域の中間に位置する場所(107.5 m),野甫サイト(9.5 m及び121.0 m)の四ヵ所からコア試料を採取した。採取したコアは,船上で直ちに1 mごとに切り分けられ,センサーによるガス濃度測定,ガス測定用のサブサンプリングを行った。1 mごとに切られたコアセクションは,CTスキャンによって構造を確認した後,10~25cm程度を間隙水抽出用に切り分けた。切り分けられたコア試料は,IODPのプロトコルに則って処理し,間隙水を抽出した。抽出した間隙水について,船上でpH,アルカリ度,栄養塩及び硫化水素濃度を,陸上において主成分濃度を測定した。

  • 大竹 翼, 梁 智現, 大友 陽子, 佐藤 努
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G04 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    p. 14-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    本研究では縞状鉄鉱層の形成過程における初期続成作用や熱水変質作用を模擬したフロースルー型熱水実験装置を製作し、鉄、クロム水酸化物に溶存2価鉄を添加することで、その変質過程を調べた。実験の結果、リアクションセル通過後の溶液組成はpHが上昇し、溶存鉄濃度が低下していたが、これは鉄、クロム水酸化物の脱水変質とクロムスピネルの形成によるものと考えられた。実験生成物のXRD分析の結果から、主な生成物はゲーサイトであったが、スピネル鉱物のピークも検出された。また、SEMおよびTEM分析の結果からもスピネル鉱物と思われる結晶も観察された。EDS分析では、針状の結晶にはクロムをほとんど含まないものが見られた一方で、スピネルと思われる結晶にはクロムが含有されており、クロムスピネルの生成が確認された。

G02 古気候・古環境解析の地球化学
  • 丸岡 照幸, 上松 佐知子, 指田 勝男, Niza Mat
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 15-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    顕生代における大量絶滅のうち特に絶滅率の大きな5つのイベントはビッグファイブと呼ばれている。これらビッグファイブのうちで最初に起こったのがオルドビス紀末の大量絶滅である。このイベントは海水準の低下で特徴づけられており、大陸氷床の形成に関連していると考えられている。マレーシア・ランカウイ諸島・ラングン島に露出するオルドビス系-シルル系泥岩・砂岩を採取し、それに含まれる有機炭素・硫化物硫黄の濃度、同位体比組成を得た。これまでの研究と同じようにd13Cの正方向の変位を見出した。それと同期してd34Sの正方向の変位を見出した。これらと炭素・硫黄濃度組成、C/S比などの情報を組み合わせて、オルドビス紀末の海洋環境について議論する。

  • 後藤 孝介, James R. Hein, 下田 玄, 青木 翔吾, 石川 晃, 鈴木 勝彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 16-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    本研究では,熱水に伴う鉄やマンガン酸化物のδ98/95Mo変動を明らかにすることを目的に,現世海底の異なる5地点より採取された熱水性の鉄およびマンガン酸化物のMo同位体分析を行った.その結果,多くの試料が,海水起源の鉄マンガン酸化物と同程度の値を示し,海水に溶存するMoの吸着反応で説明できることが分かった.しかし,海水起源の鉄マンガン酸化物よりも,δ98/95Moが大きく変動することを確認した.このことは,熱水由来のMoが,酸化物中のδ98/95Moに少なからず影響することを示唆する.太古代や原生代前期の海水Mo濃度は,現世よりも優位に低い (e.g., Scott et al., 2008 Nature).従って,太古代・原生代前期における鉄マンガン堆積物では,海水Moによる"緩衝作用"が働かず,熱水由来のMoにより,δ98/95Moが大きく変動した可能性が高い.

  • 黒田 潤一郎, 鈴木 勝彦, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 17-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    海洋堆積物中に保存される多様な元素の同位体組成は,その元素の海洋中の挙動や含まれる鉱物相によって,さまざまな現象の指標となる.私たちの研究グループは,これまで鉛やオスミウムなどの同位体組成を用いて,地質学的時間スケールでの海洋における諸現象の理解に活用してきた.その中で,本講演では中生代の巨大火成岩岩石区の噴火と海洋のイベントの関連,新生代の地中海と大西洋の海水交換の歴史などについて紹介したい.

  • 石村 豊穂, 長谷川 四郎, 池原 研
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 18-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    本研究では,底生有孔虫の個体別同位体比分散(バラツキ)という新しい尺度を活用して海洋底層環境指標の高精度化を試みること,また,これまで得られた海洋堆積物試料の積極的な再活用を目指すことを目的とした.結果,Uvigerina属の酸素安定同位体比は地域によらず均質で環境指標としての信頼性が高いことがわかった.また,新たにNonionellina labradoricaやBolivina spissa、Islandiella norcrossi, Globocassidulina sp.の同位体組成も環境指標として信頼性が高いと認定した.また,安定同位体組成のバラツキを活用した堆積物の再堆積評価が可能であることもわかった.

  • 小平 智弘, 堀川 恵司, 張 勁, 村山 雅史
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 19-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    近年,浮遊性有孔虫のBa/Ca比が新しい過去の塩分プロキシとして期待されている.本研究では,東シナ海の海水のBa/Ca比と表層堆積物に含まれる浮遊性有孔虫殻のBa/Ca比の分析から,東シナ海における浮遊性有孔虫のBa/Ca比‐古塩分プロキシの有用性を評価した.東シナ海の表層海水からは,Ba/Ca比と塩分に相関関係が成り立つことが確認された.一方,表層堆積物中の浮遊性有孔虫からも,殻のBa/Ca比が表層海水の塩分に対応することが示された.しかし,浮遊性有孔虫のBa/Ca比の分配係数は,飼育実験に基づく分配係数とはわずかに異なる傾向を示した.

  • 窪田 薫, 横山 祐典, 石川 剛志, 鈴木 淳, 石井 雅男
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 20-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    人間活動に伴い大気へと放出された二酸化炭素が海洋表層水のpHを例にない速さで低下させている(海洋酸性化)。造礁サンゴの石灰化は海洋酸性化に脆弱であることが指摘されている。これまで、海洋酸性化が造礁サンゴに与える影響の評価は一般に飼育実験を通じて行われてきており、野外において影響を評価した研究はほとんどない。そこで本研究では、北西太平洋に位置する父島・喜界島で得られた塊状ハマサンゴの炭酸塩骨格に対して、過去100年間のホウ素同位体比(δ11B)の分析を行った。測定結果は、1960年以降、ホウ素同位体比が顕著に低下していること、すなわち石灰化流体(炭酸塩骨格の素になる母液)のpHが低下していることを示唆していた。温暖化に代表される種々の環境ストレスに既に晒されている造礁サンゴに対して、海洋酸性化はさらなるストレスを既に与えている可能性が高いと考えられる。

  • 横山 祐典, John B. Anderson, 宮入 陽介, 山根 雅子, 菅 寿美, Lauren Simkins, 大河内 直彦
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 21-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    ロス海は世界最大の棚氷を有しているとともに、海底に着底した西南極氷床の主な流出経路である。西南極氷床は、全てが融解すると全球的な海水準を5m以上上昇させる可能性があり、現在進行中の温暖化によりその安定性が危惧されている。本研究では、ロス海の海底地形/地質調査を行うとともに、新しく特定有機化合物をつかったC-14年代測定を行った。過去の氷床縁辺変遷に関する正確な年代を得るとともに、これまでその挙動が明らかになっていなかった、棚氷の位置の特定を、大気上層で生成された宇宙船生成核種であるBe-10を使って復元した。その結果、ロス棚氷の崩壊が大規模かつ急激におよそ5,000年前というこれまでよりも10,000年もより現在に近い時期であったことが明らかになった。さらにこれまで謎であった西南極氷床コアの同位体による温度復元結果の場所による相違点について、統合的な説明を加えることに成功した。

  • 南 雅代, 加藤 ともみ, 徳丸 誠, 堀川 恵司, 中村 俊夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 22-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    近年、石筍の14Cは、年代測定のツールとしてよりも、IntCal曲線(大気の14C)と比較することにより、過去の水循環を知るための有効なプロキシとして注目されている。実際にいくつかの石筍の報告例から、大きいDead炭素の寄与率(Dead Carbon Fraction: DCF)をもつ石筍は、成長期間中のDCFが一定ではなく、気候によって変化した可能性があると指摘されている。我々は、静岡県の竜ヶ岩洞内の石筍の14Cを調べた結果、温暖期にDCFが小さくなる傾向が見られた。この結果はNoronha et al. (2014)とは逆、同地点から採取された滴下水の2年間にわたる結果とは同じ傾向であった。本発表においては、この竜ヶ岩洞石筍のDCF変化について、δ18O値、Mg/Ca比、Cd/Ca比、87Sr/86Sr等の結果と比較しながら議論し、石筍のDCF変化が降水量のプロキシとなり得るかについて考察する。

  • 植村 立, 眞坂 昂佑, 松本 理誠, 植村 美希, 飯塚 芳徳, 平林 幹啓, 本山 秀明
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 23-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    硫酸エアロゾルは、直接・間接効果によって気候変動に影響を与える物質である。その硫黄安定同位体比(δ34S)は、起源ごとに特有の値を持つとともに、酸化過程による分別によって変動することも知られている。したがって、アイスコアのδ34S値から、過去数万年スケールの硫酸エアロゾルの変動メカニズムや起源推定が行える可能性がある。本研究では、最終氷期から完新世にかけてのドームふじアイスコアのδ34Sを測定し、変動メカニズムの解析を行った。DF1コアの完新世のδ34S値は、現在の東南極表面積雪の値と誤差範囲で一致していた。また、DF1コアのδ34Sは、最終氷期から完新世にかけての温暖化に対応して、高くなる傾向を示した。

  • 竹内 晟也, 淺原 良浩, 原田 尚美, 小野寺 丈尚太郎, 長島 佳菜
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G02 古気候・古環境解析の地球化学
    p. 24-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
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    北極海のチュクチ海陸棚からカナダ海盆の海域は、北太平洋側から北極海への陸源物質の流入口であるベーリング海峡の北に位置し、北極海全体の物質循環を把握する上で重要な海域の1つである。近年、海氷減少に伴う北極海の栄養塩分布や海洋生態系の変化が報告されている。これらの変化を議論する上で、周辺大陸などからの陸源物質の流入の定量的評価は重要である。近年のカナダ海盆西部域のセディメントトラップの観測では、沈降粒子の大部分がアルミノ珪酸塩砕屑粒子(LM)であること、夏季および極夜が始まる11月頃に沈降粒子フラックスが高いことが明らかになっている。しかし、この沈降粒子の起源や年変化の要因の詳細は未解明である。本研究では、この沈降粒子中のLMに注目し、Sr、Nd同位体比と微量元素の組成を指標として、LMの起源とその起源物質のフラックスの推定、および年変化の要因について検討した。

G08 生物と有機物の地球化学
  • 濱 健夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 25-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    溶存態有機物(DOM)は地球表層における最大の有機炭素リザーバーの一つである。DOMは低分子量画分が微生物分解に対して安定な特徴を有するが、これは、低分子量の非生体成分が安定であることが影響している。この低分子量の非生体成分は、バクテリアの代謝産物である可能性が高い。バクテリアは植物プランクトンの生体成分を利用して成長し、その過程で低分子量の安定性の高い有機物を生産することにより、難分解DOMの生産者として機能している。

  • 大塚 朋貴, 張 勁, 稲村 修
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 26-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    富山湾は水深約200mを境に異なる水槐構造をもち(Imamura et al, 1985)、水温上昇の著しい海域とされている(気象庁)。水温上昇等の気候変動が海洋食物網に与える影響を明らかにするために、本研究では富山湾沖合の表層及び深層における食物網の現状把握と、毎月の採取が可能である深海性動物プランクトンの経年変化を、炭素・窒素安定同位体比を用いて解析した。

  • 力石 嘉人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 27-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    生物に含まれるアミノ酸には,食物連鎖に伴い15Nが濃縮するもの(アラニン,グルタミン酸など)と,食物連鎖の影響を受けずに同位体比が変化しないもの(フェニルアラニン,メチオニンなど)が存在する。すなわち,後者のアミノ酸の同位体比から,生態系のベースにある一次生産者の同位体比を,見積もることができる。本発表では,段々畑における窒素同位体比の分布(isoscape)を作り,そこに棲息する生物の生息域(habitat)を調査した研究例を紹介する。

  • 中村 英人, 安藤 卓人, 廣瀬 孝太郎, 浅岡 聡, 沢田 健
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 28-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    海洋堆積物中の長鎖アルキルジオールはC28、C30が卓越し、C32 アルカン-1,15-ジオールが長鎖アルキルジオールに占める割合が高い事例は湖沼堆積物や淡水・陸上から単離された真正眼点藻の培養試料などに限られていて、沿岸~河口域におけるジオール組成の検討によりC32 アルカン-1,15-ジオール (C32 1,15-ジオール)が河川流入指標となる可能性が指摘されている。本研究では半閉鎖的海域で流入河川の多い瀬戸内海東部の大阪湾・播磨灘の表層堆積物中の長鎖アルキルジオール分析を行い、瀬戸内海の広い範囲でC321,15-ジオールが太平洋よりも高い割合で含まれることが明らかになった。大阪湾奥部から紀伊水道にかけてのC32 1,15-ジオール割合の変化が瀬戸内海において河川流入指標として妥当であるのか、観測データや異なる起源をもつバイオマーカー組成と比較して議論する。

  • 三村 耕一, 岡田 陸, 西田 民人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 29-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    彗星衝突の際に起こる反応を考察するため、アラニン水溶液の衝撃実験を試みた。アラニン水溶液を封入した反応容器に弾丸を衝突させ、衝撃を被った試料中の出発物質(アラニン)の定量分析と生成物の定性定量分析をLCMSMSによって行った。この分析により、「衝撃圧力の増加とともにアラニンの存在度が減少し、25 GPa付近では70%程度になること」、「衝撃を被った試料からはオリゴマーが検出され、生成オリゴマーの中では直鎖の2量体が最も多く、その次に環状のジケトピペラジンが多いこと」などが明らかになった。一般に、熱水環境におけるアミノ酸の重合反応では、鎖状オリゴマーに比べて環状オリゴマーが優位に生成する。アラニン水溶液の衝撃反応は熱水環境での反応と比較可能であるにもかかわらず、熱水反応と異なる挙動を示すことは衝撃反応を理解するのに重要な手がかりとなるだろう。

  • 藤本 千賀子, 鍵 裕之, 小松 一生, 篠崎 彩子, 三村 耕一, 西田 民人, 後藤 弘匡
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 30-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    アミノ酸を出発物質とした、惑星表層での衝突現象や熱水噴出口を模した衝撃圧縮実験あるいは高温高圧実験により、ペプチドの生成が報告されている。これらの実験により、重合反応には圧力と温度の両方が寄与することが明らかになったが、圧力と温度がそれぞれどのような役割を果たしているのかはよく判っていない。我々はこれまでに、重合反応における圧力の重要性を確かめるため、アラニンに対して室温での加圧実験を試みており、アラニンの2量体、3量体が生成することを見出している(Fujimoto et al., 2015)。今回、より長鎖のペプチドをLC-MSMSを用いて検出することに成功したので、その詳細について報告する。

  • 高橋 修也, 鍵 裕之, 藤本 千賀子, 小松 一生, 篠崎 彩子, 三村 耕一, 西田 民人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 31-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    代表的なアミノ酸であるアラニンをその飽和水溶液とともに5 GPa以上に加圧すると、室温条件で脱水縮合反応が起こりオリゴペプチドが生成することが報告された(Fujimoto et al., 2015)。これまで、アミノ酸の脱水縮合反応は水が共存する条件では起こりにくいと考えられていたため、水が共存する条件でのオリゴペプチドの生成は、新たな生体関連物質の生成の場として高圧条件が重要であることを示唆している。ここではアラニン水溶液の高圧下での挙動を観察し、脱水縮合反応のメカニズムを考察する。

  • 高橋 修也, 鍵 裕之, 篠崎 彩子, 菅 大暉, 坂田 昂平, 高橋 嘉夫, 野口 高明, 武市 泰男
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 32-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    近年、室温高圧条件でアミノ酸の一種であるアラニンから、二量体(アラニルアラニン)をはじめとするアラニンの重合体が生成することが報告された。しかしながら、圧力誘起重合反応のメカニズムや生成物の空間分布は明らかになっていない。本研究では、ダイヤモンドアンビルセルを用いて53 GPaまで加圧したアラニンを回収し、小型走査型透過X線顕微鏡(cSTXM)を用いたアラニルアラニンの検出と、その空間分布の取得を試みた。発表では、アラニンとアラニルアラニンの標準試料、高圧から回収した試料を水に溶解させたのち蒸発乾固した薄膜、回収試料をFIBで加工した薄膜についてSTXM観察の結果を報告する。

  • 篠崎 彩子, 三村 耕一, 西田 民人
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G08 生物と有機物の地球化学
    p. 33-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    沈み込むスラブにおける有機物の安定性と化学反応を明らかにするため、芳香族化合物をモデル物質とした高温高圧実験を行った。まず、2GPa程度までの圧力での実験が可能な高温高圧発生装置を設計、開発し、代表的な芳香族化合物であるナフタレン、フタラジンを出発物質とした高温高圧実験を行った。回収試料の有機元素分析、GC/MS, GC/FID分析からフタラジンの1GPa, 250℃での重合反応が観察された。

G03 放射性廃棄物と地球化学
G11 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
  • 井元 純平, 古木 元気, 落合 朝須美, 山崎 信哉, 難波 謙二, 大貫 敏彦, Bernd Grambow, Rodney C. Ew ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    p. 41-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    福島第一原発がメルトダウンした際に高濃度の放射性セシウムを含有する粒子(Cs-rich microparticles:CsMPs)が形成され、環境中に放出された。本研究では電子顕微鏡技術を駆使して、この粒子の内部構造と元素分布を明らかし、粒子生成過程と事故時の炉内環境を考察した。その結果、CsMPsは非晶質のSiO2のマトリックス中に結晶性を有する多数のFe-Zn酸化物ナノ粒子が溶け込まずに取り込まれ、Csはその粒子に吸着した状態で存在することが明らかになった。また核分裂生成物で構成されたナノ粒子を内包物として取り込んでいた。よってCsMPsは放射性核種の重要な移行媒体になっていることがわかった。

  • 古木 元気, 井元 純平, 落合 朝須美, 山崎 信哉, 難波 謙二, 大貫 敏彦, Bernd Grambow, Rodney C. Ew ...
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    p. 42-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    現行の環境中放射性Cs移行モデルに対する新たな因子として高濃度放射性Cs含有微粒子(CsMPs)の動態を調べた。福島県熊川河口堆積物、河川流域表層土壌から福島原発由来CsMPsを単離後、原子スケールで分析した結果、内部構造は他のCsMPsと同様にFe-Zn酸化物ナノ粒子の凝集体がSiO2のマトリックスに覆われていた。また、粒子内部からCsClおよびCsOHの内包物が同定された。河川流域と河口堆積物で同様の粒子が検出されたことから、CsMPsが表層水中を移行したことが示され、その後の海洋への流出が示唆された。

  • 三浦 輝, Fan Qiaohui, 栗原 雄一, 坂口 綾, 桧垣 正吾, 石丸 隆, 神田 穣太, 高橋 嘉夫
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    p. 43-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    層状ケイ酸塩へのCsの吸脱着反応に影響を与える因子として塩濃度と天然有機物に注目した。試料として、福島沖の沈降粒子や河川の懸濁粒子などを用いた。137Csの添加実験では、有機物の除去後でKdは上昇した。これは、有機物がCsの吸着を阻害していることを示唆している。塩濃度の増加によりKdは低下した。これは、Kなどの陽イオンとCsとのイオン交換により吸着量が減少することを示唆している。有機物の除去よりも、河川と海洋での塩濃度の変化のほうが、Kdに与える影響が大きいことが分かった。実際に河川、河口、海洋で観測されているKdとGAMにより計算されたKdはほぼ同様の結果を示しており、Kdの水質への依存性や懸濁粒子の特性をGAMが反映しており、これに基づき海水に溶脱する放射性セシウムの割合を推定できることが示唆された。

  • 田中 万也, 山﨑 信哉
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G11 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    p. 44-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、河床堆積物中に含まれる安定セシウムと福島第一原発事故由来の放射性セシウムの関係を明らかにすることを目的とした。採取した堆積物をサイズ分画した後、それぞれについて安定セシウム及び放射性セシウムの分析を行った。その結果、両者とも類似した粒径分布を示した。また、こうした粒径分布は堆積物中の鉱物組成と関係していることも明らかとなった。安定セシウムと放射性セシウムが同様の分布を示すことは、同じセシウムという元素の同位体であることを考えれば妥当な結果である。

G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
  • 板井 啓明, 田辺 信介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 45-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    水銀安定同位体地球化学は、重元素安定同位体比分析技術の発展に伴い研究が進み、近年では環境動態解析ツールとしての成熟度が高まりつつある. 水銀は環境中で様々な酸化還元反応により動態が変化し、大きな質量依存同位体分別(MDF)を示す. また、光化学反応に敏感な非質量依存同位体分別(MIF)を示すため、ユニークなトレーサーとして利用できる.本講演では、独自データとして北西太平洋のカツオ試料における水銀安定同位体比分布を示し、既存研究で報告された各種リザーバー(大気・海洋・生物試料)におけるMDF指標とMIF指標の変動幅・同位体分別挙動と比較を通じ、ソース解析・ヒトへの曝露源解析における水銀安定同位体比の有効範囲について検討する.

  • 中川 書子, 松本 佳海, 小幡 祐介, 伊藤 昌稚, 角皆 潤
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 46-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、水環境中の硝酸イオンの三酸素同位体組成を指標に用いることで、酸栄養湖である猪苗代湖(福島県)における窒素循環速度を定量することに挑戦した。試料採取は、2014年および2015年の6月と9月に行い、各層の硝酸濃度と硝酸の窒素・三酸素同位体組成を定量し、窒素循環速度を算出した。定量した窒素循環速度の平均値や季節変化から、湖内の同化反応は夏季に集中していることが分かった。また、湖内の硝酸の平均寿命は水の滞留時間の1.7倍であった。猪苗代湖は最近まで湖水が酸性であった影響を受けて、未だに一次生産で消費される量に対して河川などを通じて供給される硝酸量が過剰な状況が続いていると結論付けた。

  • 角皆 潤, 宮内 貴規, 大山 拓也, 小松 大祐, 中川 書子, 小幡 祐介
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 47-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では、(1) 流域の土地利用の変化が河川水中の大気硝酸の混合比や絶対濃度に与える影響を定量的に評価する、(2) 流域の土地利用の変化が河川水中の再生硝酸の同位体組成や起源(一般的な有機体窒素の硝化か、それとも人為起源か)に与える影響を定量的に評価する、の二点を主目的に、琵琶湖の流入河川(n=33)と流出河川(n=1)について、その濃度と三酸素同位体組成を含めた窒素・酸素安定同位体組成を、季節変化を含めて1年間に渡って調べた。

  • Russel Chidya, Sherif M. Abdel-dayem, 竹田 一彦, 佐久川 弘
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 48-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    本研究では河川水中の5種類の残留農薬(ダイアジノン、フェナリモル、シアナジン、イソプロチオラン、シメトリン)の測定法の検討を行い、黒瀬川(広島県)河川水中のこれらの農薬の濃度を測定して分布を明らかにした。河川水試料は、黒瀬川の7地点から毎月(2016年3~6月)採取した。試料は固相抽出装置(SPE)で濃縮し、逆相HPLCによって分析した。分析検討項目は濃度直線性範囲、選択性、検出限界(LOD)、定量限界(LOQ)です。検出ピーク強度と保持時間(RTs)を最適化するために、移動相組成(アセトニトリル-MilliQ)を調製した。10-200μg/L (r2≥0.99)の範囲(誤差-0.19~+0.69%)で良好な直線性を達成した。分析操作過程における平均回収率は70.5~120.6%であった。シアナジンとシメトリンは田植えの期間(4月と5月)に比較的高い濃度を示し、使用時期と良い相関を示した。6月のK3とK4地点ではほぼすべての農薬が比較的高い濃度を示した。

  • 時枝 隆之, 葛西 眞由子, 伊波 はるな, 谷口 雄哉, 小菅 瞭吾, 中山 典子
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 49-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    富栄養湖沼手賀沼において、有機炭素の観測を通年で実施した。有機炭素存在量は春季に大きく、冬季に小さい季節性を有しており、有機物生産速度との間によい相関関係があった。河川による有機炭素流出量は流入量を上回っており、年間でおよそ300MgCの有機炭素を正味で流出させていた。溶存無機炭素の観測結果とあわせると、手賀沼はその表面から全球平均の2倍に相当する速度で二酸化炭素を放出する一方で、湖内での生物活動により無機炭素を直接大気と交換することができない有機炭素に変換するとこで大気への二酸化炭素放出を自ら抑制していることがわかった。

  • 橋本 洋平
    原稿種別: 口頭講演
    専門分野: G09 水圏や土壌圏の環境地球化学
    p. 50-
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/09
    会議録・要旨集 フリー

    土壌に微量ではあるが普遍的に存在しているCdは,イネに吸収されやすくコメに蓄積することから,日本を含めて世界的にコメの消費量が多い地域における問題となっている.土壌からイネへのCdの移行には,土壌中でのCdの化学形態が密接に関係しており,土壌の還元に伴う硫化カドミウム(CdS)の生成によってイネへの吸収が抑制されることが指摘されていた.本研究では,放射光を光源とするX線吸収微細構造(XAFS)分析によって,土壌の還元から酸化に至る一連の過程におけるCdの溶解性と化学形態の変化について明らかにすることを目的とした.土壌の還元が進行することによって,CdSの生成は促進されるが,その割合は多くても全Cdの50%程度であること,CdSの溶解は酸化還元電位の上昇と密接に関係しており,硫黄の濃度や化学種にも影響を受けることが示唆された.

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