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北極海のチュクチ海陸棚からカナダ海盆の海域は、北太平洋側から北極海への陸源物質の流入口であるベーリング海峡の北に位置し、北極海全体の物質循環を把握する上で重要な海域の1つである。近年、海氷減少に伴う北極海の栄養塩分布や海洋生態系の変化が報告されている。これらの変化を議論する上で、周辺大陸などからの陸源物質の流入の定量的評価は重要である。近年のカナダ海盆西部域のセディメントトラップの観測では、沈降粒子の大部分がアルミノ珪酸塩砕屑粒子(LM)であること、夏季および極夜が始まる11月頃に沈降粒子フラックスが高いことが明らかになっている。しかし、この沈降粒子の起源や年変化の要因の詳細は未解明である。本研究では、この沈降粒子中のLMに注目し、Sr、Nd同位体比と微量元素の組成を指標として、LMの起源とその起源物質のフラックスの推定、および年変化の要因について検討した。