p. 1-
天体衝突は地球史において、生物の大量絶滅をふくむ表層環境の変動を引き起こしてきた。最近黒澤(2016, 地球化学)は、高速度(>30 km/s)で天体衝突が起きた場合、岩石惑星の主要構成要素である珪酸塩が分解され、分子酸素が発生する可能性があることを指摘した。もし実際に、過去の天体衝突に伴って大気・海洋の酸化がおきたことが明らかにされれば、地球の酸化史の描像が刷新される可能性がある。しかしこの新しい仮説について、地質記録に基づく検証は試みられていない。西オーストラリア・ピルバラ地塊には後期太古代の堆積岩が厚く累重するが、その中には天体衝突を示すスフェリュール層が複数挟まれている。発表者らは、その内の一つを含むピルバラ地塊東部のCarawine Dolomiteについて、上述の仮説の検証を目的として層序学的研究を行ってきた。本発表では、この結果について報告する。