p. 10-
発育初期のイワシ類は、生後30 -50日程度のシラス(仔魚)の間プランクトン生活を行い、その後カエリ(稚魚)に変態してから徐々に回遊を行う。イワシ類の水産資源の安定的な確保のためには、発育初期の生態や生育環境の情報を蓄積することが重要である。本研究では、シラスの生息環境履歴を調べるため、炭酸カルシウム(アラゴナイト)からなる耳石の酸素同位体比(δ18O)の分析を行った。耳石は体成長とともに付加成長し再吸収されないため、そのδ18Oは水温と海水のδ18O履歴を反映する。そこで、富山湾沿岸で採取されたシラス2種(マイワシ・カタクチイワシ)から微小な耳石を取り出し、耳石のδ18Oから生息環境の推定を行った。本研究ではシラスを外部形態から5つの発育段階に区分し、発育段階による酸素・炭素同位体比(δ18O・δ13C)の変化を明らかにしつつ仔稚魚期の生態解明を目指した。