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太古代堆積岩中の有機炭素は初期地球における生物進化を解明する重要な手がかりである。有機炭素の形態や組成にはその起源となる微生物の情報が残りうる一方で、母岩が変成・交代作用を被った場合には有機炭素も変質を受けることから、正確な起源同定を行うためには炭素質物質の概形や構造に対する変質の影響を見積もる必要がある。本研究では、初期〜中期太古代堆積岩中の有機炭素に対して走査型/透過型電子顕微鏡による微細構造観察を行い、その起源や熱水変質・変成作用に対する影響評価を行った。 シェバ鉱山試料は低変成度で有機炭素の初生的形態が比較的良く保存されており、鉱化流体の形態への影響は有機炭素粒子表層に留まっていることがわかった。一方でイスア表成岩帯試料のように変成度の高い岩石では有機炭素の移動が起こっているがその反応は局所的であった。以上の観察結果より、太古代岩石中有機炭素の起源や変質の程度の推定には、ナノスケールに及ぶ微細構造観察が有効であることが本研究により明らかとなった。