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遺跡から出土する骨遺物から年代や食性の情報を得るためには、有機成分の骨コラーゲン中の放射性炭素(14C)年代測定や炭素・窒素・酸素安定同位体比測定を行うのが一般的である。しかしコラーゲンは加熱により容易に分解するため、火葬された骨の年代測定や食性解析には使えない。そこで、我々は、加熱後も骨に残存しうる無機成分の炭酸ヒドロキシアパタイト(Carbonate Hydroxyapatite: CHa)に着目し、その有用性を検討している。これまでの研究から、火葬骨に混入している二次的な炭酸塩等の汚染物質を適切な化学処理で除去することにより、CHaから正確な14C年代、さらに、Sr/CaやSr安定同位体比を用いて食性解析が可能であることが明らかになりつつある。 本講演においては、どのような火葬骨であれば、CHaによる信頼性のある14C年代や食性解析が可能であるかを明らかにするため、加熱温度の違いによる骨CHa中のアパタイトの結晶性の違い、汚染の受けやすさの違いについて調べた結果を報告する。