天然試料の科学・同位体組成を分析する地球化学的手法は,自然科学の多様な分野に応用可能であり,学際的な研究に適した手法だと言えよう.最先端計測手法の開発が新たな学問分野を切り開くことは明らかだが,境界領域研究の発展には分析のコモディティ化が重要な場合もある.一方で,高度な地球化学的手法を応用する事は,生態学のブレイクスルーとなる可能性を十分に有している.本発表では,地球化学的手法を水産学へ応用した (1) 耳石酸素炭素安定同位体分析によるニホンウナギの放流・天然魚判別,(2) 高精度二次イオン質量分析装置を用いたニホンウナギ耳石核部分の酸素同位体比分析による産卵水深の推定,(3) 高度な地球化学的手法によるクロマグロの外洋域での回遊経路の推定,の3つの研究例を紹介し,地球化学的手法の水産学への応用について展望を示す.