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バングラデシュやインドなどの東南アジア稲作地域では、水田土壌のヒ素汚染が広範囲で起きており、水田土壌中におけるヒ素の挙動解明が急務とされている。ヒ素は土壌中でヒ酸(As(V))、亜ヒ酸(As(III))として存在し、化学種により溶解性や毒性が異なることが知られている。水田土壌は湛水期に酸化層と還元層に分化するため、局所的に異なるヒ素反応が起きていると予想される。しかし、mmスケールで分化する酸化層と還元層を微視的に観察することは従来手法では難しく、研究が進んでいない。そこで本研究では、高い空間分解能を持つ放射光源X線顕微鏡(μXAFS法)、微小電極法および分子生物学的手法を組み合わせ、土壌中のヒ素挙動や微生物影響を微視的に調べ、とくに酸化還元境界層におけるヒ素挙動を調べた。