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原始海底熱水環境は生命が代謝を獲得する上で最も有利な場所であったと考えられている。しかしながら、海底熱水系は水に満ちた環境であり、化学進化プロセスで極めて重要となる有機分子の脱水縮合反応が起きにくいという問題点がある。そこで本研究で、初期地球の海底熱水環境において水の活動度の低い場所が存在していたのかどうかについて地質学的な観点から検討を行った。その結果、原始地球の海底熱水系には液体・超臨界CO2環境が存在していた可能性があることがわかった。液体・超臨界CO2は極性が低く、有機溶媒としての性質を持ち、いくつかの有機物に混和性を示す。したがって、海底熱水循環を通じて形成される海底・海底下液体・超臨界CO2環境が、海底熱水環境において不利と考えられてきた生体材料の高分子化や膜小胞体形成のような化学進化を促進する重要な役割を果たした可能性がある。