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大気環境に影響を与える化合物として、揮発性有機化合物(VOC)が知られているが、海洋生態系でのVOCの生成に関する研究例は少ない。本研究では、海洋ピコプランクトンの一種であるプラシノ藻Pycnococcus sp.に焦点を当て、15から26℃の各培養温度でのVOC生成を調べた。実験の結果、Pycnococcus sp.の培地中ではハロカーボンは検出されず、イソプレン及び二硫化ジメチル(DMS)が生成された。各培養温度での単位Chl.a当たりの生成速度を比較すると、イソプレンの生成速度はほとんど変化しなかったが、DMSの生成速度は変化し20℃で最大値を示した。珪藻でも、温度が変化するとChl. a当たりのCH3Clの生成速度が変化することが報告されており、このことから水温が変化すると、海洋植物プランクトンにより生成されるVOCの量と生成化合物が変化しうると考えられる。