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TCA回路には、典型例と理解される酸化的TCA回路に限らず多様な経路が存在し、高い保存性と、相反する多様性、柔軟性が知られる。その普遍的な機能は、教科書にあるエネルギー生産ではなく、アミノ酸、核酸、脂質、糖等の生命活動に必須の物質の生合成における中間代謝物の生産にある。 一方、炭酸固定経路として知られる還元的TCA回路におけるクエン酸分解反応は、熱力学的にcitrate synthaseの逆反応が細胞内では生じないと考えられ、ATP依存の反応が不可欠であるとされてきた。我々は、始原的バクテリア系統群に属す水素酸化好熱菌から、独立栄養や混合栄養条件においてcitrate synthaseを含む全て同じ酵素群を用い、回路に取り込まれる基質の種類と量に応じて回転方向が変動する可逆的TCA回路を見出した。このTCA回路の詳細と共に、この発見がもたらす生命の起源研究における新たな視点について議論したい。